残業許可制と不利益変更禁止の原則

残業許可制と不利益変更禁止の原則社長のための残業代対策119番だらだら残業防止の方法として、先に残業許可制の導入を紹介し、その中で、残業許可制を導入するためには、(使用者が就業規則の作成義務者であれば、)就業規則に定めることが必要であると記載しました。

そうすると、これまで残業許可制を導入していなかった中小企業においては、就業規則を変更することとなりますが、残業許可制を導入することは、就業規則の不利益変更禁止の原則に抵触するでしょうか。

たしかに、残業許可制が導入されれば、上司から許可が出ない限り残業ができないこととなりますので、労働者の自由に残業をすることができず、これまで労働者が受け取っていた残業代が減る可能性があることから、一見すると、残業許可制の導入は、就業規則の不利益変更に該当するようにも思えます。

しかしながら、残業の要否は、その時々の仕事量と労働者の平均的な能力との相関関係において決まるものですから、それぞれの労働者における残業時間は予め定められているものではなく、労働者における将来の残業代請求権は、一種の期待に過ぎません。

そして、残業許可制は、残業を一切許さないものではなく、業務の効率化と労働者の健康配慮の観点から、残業の要否を判断するものであり、残業が必要な場合には、これまでどおり、残業許可が出るのであり、残業許可制が導入される前から、必要性に応じた残業をしていたのであれば、結果として残響許可制の導入にかかわらず、残業代に大きな変化は見られないこととなりますので、必ずしも労働者が受け取っていた残業代が減ることにはなりません。

このように考えると、残業許可制を導入することは、直ちにこれが労働者の不利益と評価することはできませんので、残業許可制の導入は、就業規則の不利益変更に該当せず、就業規則の不利益変更禁止の原則には抵触しないこととなります。