3.5 機密の事務を取り扱う者 ―労働時間・休日の規制の適用除外

3.5 機密の事務を取り扱う者 ―労働時間・休日の規制の適用除外社長のための残業代対策119番労働基準法の定める労働時間・休日の規定(労働基準法32条、34条、35条)が適用されず、残業代の支払われない例外的な場合があります。

  1. 農業、畜産・水産業に従事する者(同法41条1号)
  2. 管理監督者、機密の事務を取り扱う者(同条2号)
  3. 監視・断続労働従事者(同条3号)

の三号に該当する者ですが、ここでは、「機密の事務を取り扱う者」について説明します。

機密の事務を取り扱う者

機密の事務を取り扱う者 に該当する場合には、労働基準法に基づく、時間外労働の問題やこれに対する割増賃金の問題、休日労働に関する問題やこれに対する割増賃金の問題は生じません(ただし、契約等で別の定めがあれば、それに従うこととなります。)。

ここで、「機密の事務を取り扱う者」とは、通達では、「機密の事務を取り扱う者とは秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等についての厳格な制限を受けない者であること。」とされています(昭和22年9月13日発基第17号)。

上の通達では、「秘書」が例示として挙げられていますが、管理監督者と同様に、名称にとらわれず、職務内容・責任、処遇、勤務時間管理等の実態に即して判断すべきものとされています。管理監督者に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。

日本では、伝統的に、昇進競争の動機づけのためピラミッド型の命令系統の会社が多かったのですが、総務、人事、企画などの部門で経営者直属で高度な判断を行う「スタッフ職」と呼ばれる専門職がいますが、機密情報を扱っていれば当然に該当するというものではないことに注意が必要です。

深夜割増賃金及び年次有給休暇について

上記の者に該当する場合であっても、深夜に関する規定は適用されますので、その割増賃金の問題は生じます。

また、年次有給休暇に関する規定も適用されます。

誤信して使用した場合

実態に即して判断すると、機密の事務を取り扱う者に該当しないのに、該当すると誤信して使用した場合、労働基準法の定める労働時間・休日の規定が適用され、時間外労働・休日労働の割増賃金を支払わなければいけません。

算出した割増賃金からすでに支給されている役職手当を控除できるかについては、この手当が時間外労働に対する手当分の代償であるという性質を有している場合には、控除できるが、そのような性質を有しているとはいえない場合、または職務に対する手当との区別が明確でない場合には控除ができないとされています。

(弁護士 佐藤哲平)

2014年9月16日