今回は割増賃金の割増率 について勉強しましょう。
時間外労働、休日労働の割増率
労働基準法は、時間外労働、休日労働には、通常の労働時間又は労働日の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内で命令の定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(法37条1項)と定め、その割増率 は、割増賃金令(平6.1.4政令第5号)によって、時間外労働は2割5分、休日労働は3割5分と定められています。
深夜労働の割増率
午後10時から午前5時までのいわゆる「深夜労働」にも特別の規定があり、割増率 は2割5分と定められています(同37条4項)。
1か月60時間を超える時間外労働の割増率
特に長い時間外労働を抑制するため、平成20年の労働基準法の改正によって1か月の時間外労働が60時間を超えた場合の超過時間分の労働の特別の割増率が5割と定められました(労基法37条1項但書)。施行は平成22年度からされていますが、この特別の割増率は、当分の間は中小企業には適用されません(法138条)。この点に関する詳細は後日掲載します。また、有給の代替休暇を与えることできる旨の労使協定を事業場の過半数代表を締結し、かつ、実際に労働者が有給をとった場合は、この特別の割増率による残業代を支払う必要はありません(法37条3項、労基則19の2)
時間外労働、休日労働、深夜労働が重複した場合の割増率
時間外労働,休日労働,深夜労働が重複した場合については,労働基準法施工規則20条に規定があります。
時間外労働と深夜労働とが重複した場合,割増率 は合算され、5割以上になります。
休日労働と深夜労働が重複した場合には、割増率 は合算され、6割以上となります。
深夜の時間帯に1か月60時間を超える時間外労働を行わせた場合、割増率 は合算され、7割5分以上になります。
なお,休日に1日8時間を超える労働がなされても、深夜労働に該当しない限り、割増率 は3割5分以上でかまいません(昭22.11.21基発366号)。
以上をまとめると,割増率は以下のとおりになります。
時間外労働(1か月60時間以下) | 2割5分 |
時間外労働(1か月60時間超) | 5割 |
休日労働 | 3割5分 |
深夜労働 | 2割5分 |
時間外労働(1か月60時間以下)かつ深夜労働 | 5割 |
時間外労働(1か月60時間超)かつ深夜労働 | 7割5分 |
休日労働かつ深夜労働 | 6割 |
限度時間を超える残業についての特別条項における割増率
36協定によらない違法な時間外・休日労働についても、使用者が割増賃金支払義務を免れないことは当然ですが(昭63.3.14基発150号)、平成20年の労基法改正では、「時間外労働の限度に関する基準」(平成10年労働省告示154号)が改正され、36協定において、1か月45時間等の限度時間を超えて時間外労働をさせることができるいわゆる「特別条項」を設ける場合には、超過時間についての特別の割増率を定めるべきとし、その割増率は法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努めるべきとされました(平成21年厚労省告示316号)。
なお、36協定に関する詳細は後日掲載します。
(弁護士 高澤文俊)