労働基準法における1日8時間、週40時間という労働時間の制限のもと、全社員を一律同じ時間に出勤させ、同じ時間に退社させることにすると、早朝や深夜に労働させた場合に常に残業代が発生してしまうことになります。今回は、これを回避するための方法を見ていきましょう。
シフト制 とは
例えば、ある会社の勤務時間は午前8時30分から午後5時30まで(休憩1時間)と決められているとします。
事務系の社員は朝から電話対応などで忙しく働いている一方、営業の社員は午前中あまり忙しくなく、午後から夕方の時間帯にアポイントが多く忙しい。その場合、営業の社員を事務系と同じように早く出勤させていたのでは、残業が多くなり残業代がかさんでしまいます。
そこで、例えば、営業は午前9時30分から午後6時30分までといった具合に、業種に合わせて勤務時間帯を変えることで残業代対策をすることができます。
また、工場や病院などでは24時間、365日無休で営業しているところがあります。このような場合は、早番、日勤、夜勤といった具合に勤務時間を分けて、複数の従業員を交替で働かせるようにします。
このように、従業員1人が働く時間を8時間以内と決めながら、従業員毎に働く時間に時間差を付けることにより、残業は発生しないことになります。
このような方法をシフト制 といい、勤務時間が1つに固定されずに1日ごとや一定の期間ごとに複数の勤務時間帯を決める方法をいいます。単に「シフト」と呼ばれることも多いですね。
うまくシフトを組むことで、残業が発生することがなくなり、会社にとっては残業代の発生を抑えることができ、従業員にとっても規則正しく働くことができるというメリットがあります。
シフト制 の導入
シフト制 導入のためには、就業規則や労働契約書等において、勤務時間については具体的に定めた上で、勤務時間帯については決定方法や基準を定めておくことになります。
そして、一定期間毎の具体的な勤務時間帯を、シフト表によって決めていくことになります。
シフトの割り振りや変更の注意点
シフトの割り振りは人事権の行使であり、使用者が権限を有すると考えてよいでしょう。シフトの変更についても同様に考えてよいでしょう。もちろんシフトの割り振り・変更について、十分に会社と従業員で話し合って決めることが望ましいといえます。
では、会社はシフトの割り振りや変更を従業員の承諾なく一方的にできるのでしょうか。
シフトの割り振りや変更は、従業員の労働条件を変更することになり、従業員の生活にも影響が出ることもあるため、使用者に権限があるといっても、無制限ではないと考えられています。
例えば、業務上特に必要がないのにシフトを変更する、ある従業員のことが気に入らないことを理由に他の従業員がやりたがらない時間帯のシフトに変更する、午後8時以降は自宅で家族の介護をしなければならない従業員に対して午後10時までのシフトに割り当てるなどの場合は、無効とされる可能性が高いといえるでしょう。
(弁護士 田島寛之)