2.12 有給休暇の計画的付与

2.12 有給休暇の計画的付与社長のための残業代対策119番今回は、有給休暇の計画的付与 について勉強しましょう。

有給休暇の計画的付与 とは

有給休暇(以下「有休」といいます。)は従業員個人の権利なので、従業員個人が休む時季を指定するというのが原則です。

もっとも、それではなかなか従業員が有給を取りにくく、有休の取得率が低いという現状があります。

そこで、従業員が会社の忙しさや職場の目を気にすることなく有休を取得できるようにするため、昭和62年の労基法改正によって設けられたのが 有給休暇の計画的付与 の制度です(労基法39条6項)。

また、会社にとってのメリットとして残業代等の抑制があります。

例えば、飛び石連休の間の平日を休みにする場合、特別休業日として「休日」にしたとしましょう。そうすると、残業代等の算定基礎賃金(1時間当たりの単価)は、多くの会社では「月給÷(1年間の所定労働時間÷12)」という式で計算されることから、「休日」にすることで1年間の所定労働時間が減れば、基礎賃金が上がることになります。

一方、飛び石連休の間を「有休」とする形をとれば、1年間の所定労働時間は変わらないため、基礎賃金が上がるというはありません。

このように、休みを長期にする場合、有給休暇を利用することで残業代等を抑えることができる効果もあります。

計画的に付与できる日数

従業員の有休がすべて会社の都合で日程が決まってしまうのもかわいそう。

ということで、計画的に有休を付与することができるのは、従業員の有休日数のうち5日を超える部分のみに限定されています。つまり、従業員は、最低5日は自分の好きなときに有休が使えますが、それ以外の部分については自分の意思とは関係なく有休を消化することになるということです。

導入方法

導入するには、就業規則による規定と労使協定の締結が必要になります。

  • 就業規則に、例えば「会社は〇〇組合との間で「年次有給休暇の計画的付与に関する協定」を締結したときは、協定で定められた時季に年次有給休暇を与えることとする」などのように定める。
  • 事業場の過半数組合または過半数代表者との労使協定で定める。

つまり、労使協定で、「8月13日~15日は夏期一斉休暇」と定めれば、その事業場の従業員については、8月13~15日は有休になります。従業員の誰かが、私はいやですといってもそれは通りません。

また、このような一斉休暇のパターンだけでなく、Aさんは8月1週目、Bさんは2週目、Cさんは3週目・・・などのように年休計画表を使って個人ごとに付与する方法もあります。

労使協定の例

有給休暇の計画的付与を導入する場合の労使協定の例としては、以下のものが考えられます。参考にしてみてください。

年次有給休暇の計画的付与に関する協定

〇〇株式会社と〇〇労働組合とは、標記について次のとおり協定します。

1. 平成〇年度の年次有給休暇のうち3日分については次の日に与えることとします。

〇月〇日、〇月〇日、〇月〇日

2. 年次有給休暇の日数から5日を差し引いた残日数が3日に満たないものについては、その不足する日数の限度で第1項に掲げる日に特別有休休暇を与えます。

平成〇年〇月〇日

〇〇株式会社 代表取締役 〇〇〇〇
〇〇労働組合 執行委員長 〇〇〇〇

(弁護士 田島寛之)

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