少額訴訟で残業代を請求された場合の対応

少額訴訟で残業代を請求された場合の対応社長のための残業代対策119番

残業代請求における法的手段

労働審判か、訴訟か

残業代請求に関する紛争は、労働審判によって解決が図られるイメージをお持ちの方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、必ずしも労働審判によって解決が図られるものではありません。
残業代請求を行うに際しては、最初から、訴訟が提起されることがあります(法律上は、残業代請求を行うに際して、まず最初に、労働審判を提起しなければならないという規定はありませんので、最初から訴訟の場で解決を図ることも可能なのです。)。

通常訴訟か、少額訴訟か

請求する残業代の額が、60万円を超えていれば、通常の訴訟となりますが、60万円以下であれば、通常1回の手続で判決が出される「少額訴訟」が提起されることもあります。

少額訴訟への対応

では、従業員から、少額訴訟が提起された場合、企業側はどのように対応すればよいのでしょうか。

少額訴訟の概要

少額訴訟は、迅速に紛争を解決するために、手続が通常の訴訟に比べ簡易なものとなっています。

例えば、企業側が残業代を請求した従業員に対し、何か債権を持っている場合、通常の訴訟ですと、「反訴」といって、従業員が提起した訴訟を利用して、企業が当該従業員に対して、逆に訴訟を提起することが可能ですが、少額訴訟ではそれが禁じられています(民事訴訟法369条)。
また、主張も1回目の裁判で全てし尽くす必要がある上(同法370条2項)、提出できる証拠も、1回の期日で全て取り調べることができる証拠に限られます(同法371条)。
さらに、少額訴訟における判決には、控訴をすることができません(同法377条)。
このように、少額訴訟には、通常の訴訟と異なり、多くの制限があるため、じっくりと従業員の主張の当否や提出すべき証拠を検討したい場合は、通常の訴訟への移行を申し出ること(同法373条1項)をお勧めします。

少額訴訟のメリット

従業員の請求を争うつもりがない場合には、企業側の資力状況等によっては、通常の訴訟とは異なり、判決において、分割払いが定められたり、訴え提起後の遅延損害金を免除する旨が定められたりする可能性がありますので(同法375条1項)、少額訴訟での解決を図ることにもメリットがあるといえます。