国会議員の私設秘書と残業代

国会議員の私設秘書と残業代社長のための残業代対策119番前回は、公務員の残業代について解説しましたが、今回は、国会議員の私設秘書と残業代 について勉強しましょう。

国会議員の私設秘書と残業代

今年の3月、国会議員が私設秘書に対する残業代支払いことを否定したことがニュースになりました。

国会議員の秘書は、国家公務員法2条3項15号で特別職とされ、一般企業のように残業代を支払う必要はないとされています。しかし、それは公務員としての公設秘書の場合であり、議員個人に雇われている私設秘書については当然残業代の問題が生じます。

機密の事務取扱者

足立議員は、この点について、私設秘書は「労働基準法41条2号に『管理監督者』と並んで規定されている『機密の事務を取り扱う者』に該当すると認識している」と主張しているようです。

この「機密の事務を取り扱う者」については、こちらも参照ください。

通達では「機密の事務を取り扱う者とは秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等についての厳格な制限を受けない者であること。」(昭和22年9月13日基発17号)とされ、ここでは「秘書」が具体例として挙げられており、残業代支払いの対象でないかのようにも思えます。

しかし、この点も管理監督者と同様、実態に合わせて具体的に判断することになります。管理監督者については、こちらもご参照ください。

過去の裁判例をみても、管理監督者と並列して検討しているものはあるものの、「機密の事務を取り扱う者」の該当性を正面から取り上げたものはほとんどありません。

仙台高裁昭和44年4月1日判決は、残業代との関連ではありませんが、「『機密の事務を取り扱う者』とは、その取り扱う事務が機密性を有するものであるがために労働時間、休憩および休日に関する規定をこれに適用することが困難であるとされる者、すなわち、職務の右性質上、その勤務の態様が、出社退社等についての厳格な制限を受けないものとされている者を指すものと解すべき」として、前記管理監督者該当性で考慮要素とされていたものと同じような考慮要素を挙げています。

まとめ

上記報道によれば、足立議員は「最高裁まで争う」と言っているようですが、結果は厳しいものになることが予測されます。

(弁護士 南波耕治)