民事調停 と訴訟の相違点
裁判所が関与するものとして,皆様が真っ先に思い浮かべられるのは,訴訟であるかと思います.
訴訟手続の中でも,和解,すなわち,話し合いによる解決を図る方法は用意されておりますが,基本的には,訴訟は,話し合いを目的とせず,判決によって勝敗をはっきり決めることを目的とします.
そのため,各当事者の主張は,証拠により立証されることが厳格に求められますので,証拠が不十分であったり,証拠がなかったりすれば,真実は,一方当事者の主張どおりであったとしても,その主張が証拠によって立証されていないとして,その主張が認められないこととなります.
他方,調停は,勝敗をはっきりさせることが目的ではなく,両当事者の話し合いによって柔軟な解決を図ることが目的ですので,証拠が不十分であっても,必ずしも,その主張が認められないということにはなりません.
そのため,両当事者が敵対した関係までに至っておらず,話し合いの余地があり,かつ,自己の主張を裏付ける証拠が不十分である場合には,訴訟ではなく,調停によって解決を図ることをおすすめします.
また,民事調停は,訴訟に比べ,裁判所への申立費用が半額であり,かつ,訴訟に比べ,審理期間が短いとされておりますので,迅速かつ簡潔に紛争を解決したい場合にも有用でしょう.
調停調書の効果
民事調停において両当事者の合意に至った事項については,調停調書に記載されますが,この調停調書は,債務名義(強制執行によって実現することができる請求権の存在,内容,範囲,債権者,債務者を表示した文書のこと)になりますので,調停によって合意された内容が,他方当事者によって履行されなくとも,この調停調書をもって,強制執行をすることができます.
特定調停
貸金については,個人・法人を問わず,生活や事業の立て直しを図るために,債権者と返済方法等について話し合う特定調停というものが用意されていますが,これは民事調停の特則とされていますので,進め方等については,基本的に,民事調停と同じです.
(弁護士 太田 理映)