取引条件と 与信枠の決定 とは
財産調査の結果として取引を始めることとしたら、続いてどの程度の取引をするかを検討します。これを 与信枠の設定 又は与信限度枠の設定といいます。
売上を上げるためならどんどん取引を増やせばよいのですが、販売をしてから代金を回収するまでには時間がかかることが通常です。実際に支払を受ける前に取引先が倒産してしまったら、大きな損失を被ることになってしまいます。そのため、取引先に対する信頼に応じた規模・内容の取引をする必要があるのです。これが、取引条件と与信限度枠の決定です。
取引条件と与信枠を決めるにあたっては、恣意的な判断を防ぐために、あらかじめ取引条件や与信限度枠の決定基準を決めておくのがよいでしょう。具体的には、業歴・資本構成・規模・損益・資金現況・代表者・企業活力といった調査項目ごとに配点をし、その総合得点で相手の格付けをした上で、各ランクに応じた取引条件・与信枠を決めておくことが考えられます。
取引条件の決定
取引条件としては、販売価格をいくらにするか、代引取引か代金後払か、現金決済か手形決済か、支払期限をどのくらい後にするか、担保を取るかどうか、取るとしたら何を取るか、個別取引をするにあたっての決済はどこまで必要か、などを決めていきます。
ランクが低く信頼が十分ではない会社との取引をする場合には、販売価格を高めにしたり、支払日を早めに設定したり(場合によっては現金決済にする)することが考えられます。
与信枠の設定
与信枠もまた、相手方の経営がどれほど安定しているか、確保している担保の価値はどれほどか、万が一回収不能となった場合の自社への影響はどれほどか、といったことを総合的に考慮して、必要かつ安全な限度を設定することになります。
また、新規取引先との間では、初めのうちは大きな与信枠を設定せず、何度か取引を繰り返して安全な取引先だということが分かってから徐々に増やしていくのが基本です。本当に悪質な業者というのは、初めの数回の取引は誠実に決済をして信用を得たところで大きな取引を持ち掛け、相手がこれに応じた途端に踏み倒すものです。したがって、数回適切に代金決済されたからといって一気に取引を拡大するのはリスクがあると考えておく必要があります。
(弁護士 鈴木 俊行)