債権回収の相手方
債権は、前問でご説明したとおり、債権者が債務者に対して、一定の行為や給付を請求しうることを内容とする権利をいいますので(本HPでは、金銭債権を念頭においておりますので、以下、断りのない限り、金銭債権をさすものとします。)、原則として、債権を有する債権者は、債務者に対して、一定の給付を請求することとなります。
しかし、債権者が有する債権に保証人や連帯保証人が存在する場合には、債権者は、債務者のほか、保証人に対しても、請求することができます。
保証と連帯保証の違い
ここで、保証人と連帯保証人との違いについて触れておきますと、まず、債権者が、債務者に対して債権を行使せずに保証人に対して債権を行使した場合に、保証人の場合には、債権者に対し、まずは債務者に対して債権を行使してくださいと主張することができますが(これを「催告の抗弁」といいます。)、連帯保証人の場合には、この催告の抗弁がなく、債権者からの債権行使を受け入れなければなりません。次に、債務者に弁済の資力がある場合には、保証人の場合には、債権者に対し、まずは債務者から弁済を受けてほしい旨を主張することができますが(これを「検索の抗弁」といいます。)、連帯保証人の場合には、この検索の抗弁がなく、債務者に弁済の資力があろうとも、債権者から請求された場合には、連帯保証人が弁済しなければなりません。さらに、弁済の範囲についてですが、保証人の場合には、債権額を保証人の頭数で割った額を弁済すれば足りますが、連帯保証人の場合には、連帯保証人の数に関係なく、債権額全額を弁済する必要があります。
催告の抗弁 | 検索の抗弁 | 弁済額 | |
保証人 | ○ | ○ | 保証人の数を頭割りした額 |
連帯保証人 | × | × | 全額 |
このように、連帯保証人には、保証人の責任が加重されているため、通常の取引において保証が要求される場合には、単なる保証人ではなく、連帯保証人を要求する場合がほとんどです。
会社の役員に対する請求
会社に対する債権の場合、当該会社の役員に対しても債権を行使できる場合がありますが、これは、会社の役員であるがゆえに当然に債権を行使できるものではなく、当該役員が会社の(連帯)保証人になっているためです。法律で、会社の役員が会社の保証をしなければならないと定められているものではありませんので、必ずしも、会社の役員に対して債権を行使できるものではないことにご注意ください。
もし、債務者が死亡した場合には、債務は、原則として相続の対象となるため、債権者は、当該債権を、債務者の相続人に対して請求することができます。
しかしながら、債務者の相続人が相続放棄している場合には、当該相続人には債権を行使することができません。
債務者が死亡した場合における債権回収の方法と態様については、Q4で詳しく解説します。
(弁護士 太田 理映)