3.2 仮処分 

3.2 仮処分 中小企業債権回収119番

問い 仮処分 とは、どのような場合に利用するものですか。
答え 所有権留保や譲渡担保権の対象となっている財産がある場合に、訴訟で引渡しを求めている間に債務者が処分等してしまうおそれがあるときに利用することが考えられます。

 

仮処分 とは

所有権留保や譲渡担保権の対象となっている財産がある場合、まずは債務者に対して引揚げに応じるよう求めることになります。債務者がこれに応じない場合、訴訟によりその引渡しを求めることになります。
しかし、訴訟の判決が出るまでには時間がかかります。訴訟を行っている間に、債務者が対象物件を処分してしまう危険があります。このような場合に、対象物件を債務者の所から他に移転できないようにしたり(係争物に関する仮処分。具体的には処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分など)、仮に引き揚げたりする手続(仮の地位を定める仮処分。具体的には断行の仮処分など)があります。これが仮処分です。
仮処分は、仮差押えと同様に、債務者の主張を聞かずに迅速に行うものですから、債権者には担保を積むことが求められます。

処分禁止の 仮処分

処分禁止の仮処分は、特定物についての給付請求権の実現を保全するため、債務者の目的物に対する法律上の処分を禁止する不作為命令を内容とするものです。
代表的なものとしては、抵当権設定契約を締結しながらその登記をしない債務者に対して、抵当権設定登記手続を求める訴訟をしている間に第三者にその不動産を売却したり抵当権を設定したりすることを防ぐために処分を禁止する仮処分が挙げられます。

占有移転禁止の仮処分

占有移転禁止の仮処分は、物の引渡し(不動産の場合は明渡し)の請求権を保全するためのものです。所有権留保や担保権実行による引渡請求権の保全が挙げられます。
占有移転禁止の仮処分の執行後に目的物の占有を取得した第三者に対しては、債権者は、債務者に対する本案の勝訴判決を債務名義として、目的物の引渡し・明渡しの強制執行をすることができます。

断行の仮処分

断行の仮処分は、目前に急迫した危険を除去するための暫定的措置として、本案判決に基づき強制執行がされたのと同じ状態を仮に実現させるものです。例えば、リース物件たる自動者の引渡しについて断行の仮処分を得ると、執行官を通じて自動車の引渡しを受けたうえで、これを処分することができます。
断行の仮処分はこのように重大な結果を生じさせるものですから、原則として債務者が出頭して意見を述べる場である審尋を行わなければなりません。他方、審尋を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情がある場合には、審尋は必要なくなります。

(弁護士 鈴木 俊行)