3.4 少額訴訟

3.4 少額訴訟中小企業債権回収119番

問い 少額訴訟 とはどのようなときに利用するものですか。
答え 請求額が60万円以下であれば、少額訴訟を利用することができます。

 

少額訴訟 の制度趣旨

少額訴訟 とは、小規模な紛争について、一般市民が訴額に見合った経済的負担で、迅速かつ効果的な解決を裁判所に求めることを可能にしたものです。

手続き(通常訴訟との違い)

まず、裁判所は簡易裁判所に限定されており、訴状を簡易裁判所に提出することにより提起します。なお、ひな形は各地の簡易裁判所に用意されており、裁判所のホームページから入手することもでき、書き方の説明も載っています。
原則として1回の審理で終了し、その日のうちに判決が言い渡されます。そのため、1回目までに証拠を準備することが必要です。証人尋問が必要であれば、1回目の審理に連れていくことが必要です。
また、通常訴訟においては分割払いを認める判決等にはなりませんが、少額訴訟の場合、3年を超えない範囲で支払いを猶予したり、分割払いを定める判決が出ることもあります。なお、判決を債務名義として強制執行可能である点は変わりません。
そして、通常訴訟と異なり、判決に対して控訴をすることはできず、異議申立てができるにとどまります。異議が申し立てられた場合、判決前の状態に戻り、通常訴訟の手続きで審理することとなります。そして、その審理後の判決に対しても控訴をすることはできません。そのため、十分な勝訴可能性がある場合に利用すべきものと言えます。
なお、少額訴訟は業者による過度な利用を防ぐ趣旨で、同一の簡易裁判所に提起できるのは1年間に10回までと制限されています。
また、被告側には、最初の期日に弁論をしないで、通常訴訟へ移行させる申述をする権利が認められています。これは、少額訴訟による特殊な手続きを望まない被告側の権利を保護する趣旨です。

最後に

支払督促は訴訟なしで債務名義を得ることができますが、それを受けた相手方は、とりあえず異議を出して時間を稼ぐことを考える場合があります。その場合は通常訴訟に移行することになるので、支払督促の費用に加えて通常訴訟の費用や時間を要することになりかねません。そのため、60万円以下の請求であれば最初から少額訴訟を使う方が簡易迅速であることが多いと考えられます。
ただし、少額訴訟は通常訴訟に比べて簡易な手続きで審理されますが、請求額60万円以下に制限されていますので、判決を得ても最大60万円までしか回収できません。そのため、訴訟の費用に加えて強制執行の費用を考えれば費用倒れになってしまう恐れもあります。その辺りの事情をよく考慮し、場合によっては和解により任意の履行を促すのが合理的といえることも多いと思われます。その場合でも、相手方が任意の履行をしない場合は和解調書を債務名義として強制執行することも可能です。