3.8 強制執行

3.8 強制執行中小企業債権回収119番

問 強制執行とは、どのような場合に利用するものですか。
答え 訴訟等を行って債務名義を取得したにもかかわらず債務者が支払わない場合で、対象とする価値のある財産を有している場合に利用することが考えられます。

訴訟等を行って勝訴判決(債務名義)を取得したにもかかわらず債務者が支払わない場合でも、債権者が債務者の所有する財産を勝手に処分することはできません。この場合は、最後の手段として、国に申し立てて、債務者の財産に対して強制的にその請求権を実現してくれる手続があります。これが強制執行というものです。
強制執行の対象とする財産として代表的なものは、不動産、動産、債権です。

動産に対する強制執行(強制競売)は、対象となる不動産(土地・建物)を競売にかけて売却し、その代金の中から配当を受けて債権を回収することになります。
不動産は一般的に資産価値が高く、債権確保の手段として優れているといえます。
しかし、金融機関等がすでに抵当権を付けていることも少なくありません。それらの抵当権の負担を控除した結果、もはや価値がないとなると、不動産に対する強制執行で債権回収を図ることは断念せざるを得ないでしょう。
また、競売手続を実施するための費用は債権者が予納しなければなりません。競売の結果として落札された場合には、落札者から支払われた代金から優先的に配当されますが、落札者が現れなかったり、競売手続の途中で債務者が破産するなどして頓挫したりした場合には、予納金の全部は戻ってこない可能性があります。

動産に対する強制執行も、対象となる動産を競売にかけて売却し、その代金の中から配当を受けて債権を回収することになります。
什器備品や事務用品のほか、登記や登録のされない自動車、船舶(20トン以下)、商品などが対象となります。また、裏書の禁止されていない株券、国債、手形、小切手なども対象となります。
他方、差押えを禁止されている財産もあります。生活に欠くことのできない衣類、寝具、家具、1か月間の食料や燃料、2か月分の生活費(66万円)、実印などです。

債権に対する強制執行は、債務者が有する売掛金や預金、給料を差し押さえて、その債権の債務者(債務者の売掛先、銀行、勤務先)から直接支払ってもらう方法で回収します(取立権の行使の場合)。
なお、国民年金受給権や生活保護金品受給権などは差押えが禁止されています。また、給料や退職金についてはその4分の3に相当する額が差押えを禁止されています(ただし、給料については、33万円を超える額は全額差し押さえることができます)。