1.2.2 債務者の死亡

1.2.2 債務者の死亡中小企業債権回収119番

問い 債務者が死亡した場合、配偶者や子に請求できますか?
答え 相続放棄をしてない相続人には請求できます。

 

債務者の死亡 と相続

債務者が「死亡」した場合には、「相続」が開始します(民法882条)。

金銭債務は相続の対象となるため、債権者は、原則として、当該債権を、債務者の相続人である配偶者や子に対して請求することができます。

ただし,金銭債権は可分債権なので,相続によって当然分割され,配偶者は債権額の二分の一,子は債権額の二分の一を子供の数によって除することになります(最高裁判所第一小法廷昭29年4月8日判決民集8巻4号819頁)。

相続放棄、限定承認

配偶者や子が「相続放棄」(民法938条)している場合には、当該相続人には債権を行使することができません。

また、配偶者や子が、相続によって得た財産の限度においてのみ債務者の債務を弁済することを留保する「限定承認」(民法922条)をした場合には、債権者は、配偶者と子に対し、これら相続人が債務者を相続したことによって得た財産を超えて、債権を行使することはできません。

例えば、債務者の資産が1000万円、債務者の負債が2000万円、債務者の相続人は妻と子1人であるケースにおいて、妻と子が相続放棄や限定承認をしていない場合(これを「単純承認」といいます。)には、妻と子はそれぞれ債務者の資産を500万円ずつ相続する一方、債務者の負債も1000万円相続することとなるため、債権者は、妻と子それぞれに、1000万円ずつ請求することができますが、妻と子が限定承認をしている場合には、妻と子は、相続する資産の額である500万円の範囲で、債務を弁済することとなりますので、債権者は、妻と子のそれぞれに対し、500万円を超えて請求することができないのです。

法定単純承認

配偶者や子が、債務者の相続財産を処分したり、隠匿する等した場合には、債務者の相続を承認したとみなされ、原則どおり、債権者は、配偶者や子に対し、債権を行使することができます。

(弁護士 太田 理映)