3.5 支払督促

3.5 支払督促中小企業債権回収119番

問い 支払督促 とは、どのような場合に利用するものですか。
答え 金銭の支払を請求する場合で、債務者が債権の存否・範囲などを争わないことが見込まれ、かつ債務者の住所が遠方ではないときに利用することが考えられます。

1 支払督促 とは、金銭などの請求について、簡易・迅速に債務名義を得ることができる手続です。
請求の内容が、金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とするものである場合に、利用することができます(民事訴訟法第382条)。したがって、売掛金や貸金などの金銭債権の支払を請求する場合には利用することができます。
支払督促は、債務者の住所・事務所・営業所を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます(民事訴訟法第383条)。金銭債権の支払を請求する通常の訴訟では、特約がない限り、債権者の住所地を管轄する裁判所に訴えを起こすことができます(民事訴訟法第5条第1号)が、支払督促の場合は債務者の住所地等に管轄が限定されていますので、債務者の住所等が遠方にある場合には不便です。

2 支払督促の申立てがあると、裁判所は、債務者に対して支払督促を発します。
この支払督促には、債権者の主張する債権の内容が示されており、支払督促が送達されてから2週間以内に督促異議の申立てをしなければ、債権者の申立てにより仮執行宣言が付されるということが警告されます(民事訴訟法第387条)。
上記の督促異議の申立てがあると、支払督促は通常の訴訟に移行します(民事訴訟法第395条)。

3 債務者からの督促異議の申立てがなければ、債権者は仮執行宣言の申立てができるようになります(民事訴訟法第391条)。この申立ては、債務者の異議申立期間経過後、30日以内にしなければなりません(民事訴訟法第392条)。
仮執行宣言の申立てをすると、支払督促に仮執行宣言が付され(これを仮執行宣言付支払督促といいます)、強制執行ができるようになります。
仮執行宣言付支払督促も債務者に送達されます(民事訴訟法391条第2項)。債務者は、これが送達されてから2週間以内に督促異議を申し立てることができます(民事訴訟法第393条)。この督促異議の申立てがあると、やはり通常の訴訟に移行します(民事訴訟法第395条)。ただ、すでに仮執行宣言が付されているので、債務者が執行停止の仮処分を申し立て、かつそれが認められない限り、債権者は強制執行をすることができます。
上記の督促異議の申立てがなければ、仮執行宣言付支払督促が確定し、確定判決と同じ効力を有することになります(民事訴訟法第396条)。

4 支払督促を利用する場合の注意点として、債務者が行方不明等の場合に通常の訴訟では利用することのできる公示送達という手段(民事訴訟法第110条)が、支払督促では利用することができません(民事訴訟法第382条但書)。

5 支払督促は、簡易迅速に債務名義を得て強制執行に着手できるようにするためのものです。債務者が何ら異議を述べないと見込まれ、迅速に強制執行に着手したい場合には、利用を検討する意味があると考えられます。