内容証明郵便 とは何か
債権回収にあたっての主要な公的手続は、訴訟と強制執行です。しかし、その前の最後通牒として、内容証明郵便を出すことが多いです。
売掛金等の催促の手紙は、普通郵便で出すと手元には何も残らないため、どんなものを出したか後では分からなくなってしまいます。控えを取っておいたとしても、確かにその通りのものを出したと言える証拠にはなりません。このような不便を克服して、確かにそのとおりの手紙を出したということを第三者に証明してもらう手続が、内容証明郵便です。
内容証明郵便 は、同じ文面のものを3通作って差し出します。郵便局では、1通を受取人に送り、1通を郵便局に保存し、1通を差出人に返します。それぞれに日付の入ったスタンプが押され、何日に受け付けたという証明の文言が記載されますから、内容とともに、差し出した日付も後で証明することができるのです。
内容証明郵便の目的
内容証明郵便の主な目的は、まず、郵便の文面の内容及び発信と到達の日付を証拠化することです。例えば、賃料支払の催告や契約解除の意思表示など、ある内容の意思表示や通知をしたことが法律上の効力を持つような場合には内容証明郵便を用います。また、時効中断のための催告や債権譲渡の通知など、発信日や到達日が問題となるような場合にも内容証明郵便を用います。
また、債務者に対してプレッシャーをかけることも目的として挙げられます。というのも、普通の手紙とは異なる格式ばった形式で作成するものですから、受領した者に対して「放置すると法的手段を取ってくるのではないか」という心理的な圧力をかけることができるのです。これによって債務者があっさり支払ってくることも少なくありません。
さらに、債権者から出す最も正式な形での請求といえることから、債務者からの正式な形での返答を促すことも目的として挙げられます。これにより、債務者が支払を拒絶する理由を明確に認識した上で今後の対応を検討することができるようになります。
どのようなことを書けばよいか
債権回収の場面においては、概ね以下のような事項を記載します。
- 債権を有する根拠(いつ、どのような契約を締結したか)
- 期限が過ぎたにもかかわらず支払がないこと
- 指定の口座に対して一定期間内(概ね1週間)に支払うよう求めること
- 支払がない場合は法的措置に着手すること
内容証明郵便の出し方
内容証明郵便は、同じ文面のものを3通(受取人が1名の場合です。受取人が増えると、その分だけ必要な通数が増えます)作って差し出します。用紙の制限はありませんが、1枚の紙に書ける文字の数が決まっており、1行20字以内、1枚26行以内となっています。枚数によって内容証明料が違ってきます。
句読点は1字として数えます。行の末尾に句読点が来た場合、欄外ではなく次の行の先頭に書く必要があります。パソコンで作成する場合、書式の設定に注意が必要です。なお、ページ数を入れた場合、それも1行として扱われます。
文字の訂正・加除をする場合は、その行の欄外に何字加除したかを明記して訂正印を押します。また、2枚以上になるときは、そのつなぎ目に契印(割り印)を押します。これらの印は、差出人の氏名の下に押す印と同じものでなければいけません。
文書の冒頭又は末尾には、差出人と受取人の住所及び氏名を明記した上で、差出人の印鑑を押します。
料金は、郵便料のほか、書留料、内容証明料、配達証明料が加わります。
内容証明郵便は、集配郵便局か指定郵便局の窓口へ、宛名と差出人を明記した封筒と一緒に差し出します。手続が完了すると、差出人には、書留の受領証と、証明付きの謄本1通を返してくれます。これが内容証明郵便を差し出したことの証拠となります。
さらに、配達が完了すると、配達の事実とその日付を証明する葉書が送られてきます。
電子内容証明
上記の内容証明郵便は、インターネットを通じて出すこともできます。これを利用すれば、24時間いつでも、郵便局に行かずに内容証明郵便を出すことができます。
ただ、これを利用するには、事前に利用者登録をし、専用のソフトをダウンロードすることが必要です。また、内容証明郵便の書き方も紙で出す場合と違うので注意が必要です。
詳しくは、電子内容証明サービスのホームページ(http://enaiyo.post.japanpost.jp/mpt/)を参照してください。
(鈴木 俊行)