2.13 労務管理体制の整備

2.13 労務管理体制の整備社長のための残業代対策119番今回は、労働時間の管理についての使用者の義務を中心に、労務管理体制をどのように整備するのかについて紹介します。

使用者の義務

使用者は、通常の賃金や残業代などの支払のため、各労働者の労働時間を把握する必要があり、労基法上も、賃金台帳に各人の労働時間数を記載しなければならないとされています(労基法108条、労規則54条1項5号)。

また、平成13年に、厚生労働省が全国の労働局長に対して、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」という通達(平成13年4月6日基発第339号)を出し、その中で、いわゆるサービス残業の抑制などのため、使用者は、労働時間を適正に把握し管理する責務があるとしています。

以下では、この通達において、使用者に求められている主なものを紹介します。なお、いわゆる管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者については対象外です。

始業・終業時刻の確認・記録

原則的な方法

労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

その方法としては、原則として、①使用者が自ら始業・終業時刻を確認し、記録する、または、②タイムカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録することとされています。

自己申告制の場合

以上の原則的な方法によらずに、自己申告制によって行わざるを得ない場合は、曖昧な労働時間管理になりがちなため、以下の措置を講ずることとされています。

① 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと

② 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること

③ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

労働時間に関する書類の保存

労働時間の記録に関する書類については、労基法109条に基づき、3年間保存することが求められています。具体的には、タイムカードなどの記録、残業命令書、労働者が自ら労働時間を記録した報告書などが該当します。

なお、保存期間である3年間の起算点は、それらの書類ごとに最後の記載がなされた日であることに注意が必要です。

残業代請求の紛争を防止するために

未払い残業代請求の紛争を防止するために大切なことは、使用者が労働時間の管理を徹底することを前提に、所定労働時間内の労働について効率を高めることです。

そのために、労働時間の管理や認定方法などに関する就業規則の明文化や整備も必要です。例えば、残業は原則として事前に残業申請書などを提出し承認された場合のみ行うものと就業規則に定め、事後的にも残業内容についての報告をさせ、時間外労働を許可制にするなど、不必要な残業による残業代請求を許さない体制を作ることが重要です。

(弁護士 田島寛之)