1.8 付加金


付加金 -中小企業残業代119番

さて、残業代について法的措置を取られた際に、考えておかなければならない要素がもう一つあります。付加金です。

付加金 とは

裁判所は、会社に次の違反があった場合、労働者の請求によって、未払分だけでなく、これと同じ金額の付加金の支払いを命令することができるとされています(労働基準法114条)。

  1.  解雇予告手当を支払わないとき
  2. 休業手当を支払わないとき
  3. 賃金(残業代など)を支払わないとき
  4. 年次有給休暇中の賃金を支払わないとき

要するに、未払分だけでなくさらにペナルティとして会社が支払わなければならないお金のことを付加金といいます。会社としては倍額を支払うわけですから、けっこうなダメージになりますね。

 付加金 は、裁判所の裁量で会社に命令した場合に初めて発生するので、上の1~4の違反があった場合に当然発生するものではありません。違反の程度や態様、労働者が受けた不利益の内容など様々な事情を考慮して裁判所が決めるものとされています。

 また、裁判所が支払いを命じた判決が確定することで初めて会社に付加金を支払う義務が発生するので、判決の確定する前に残業代全額が支払われた場合は、労働者は付加金の請求することはできませんし、裁判所も支払いを命令することはできないとされています(最高裁昭和35年3月11日判決民集14巻3号403頁細谷服装事件)。

 遅延損害金

付加金については、支払いを命じる判決が確定した日の翌日から、民法で定められている年5%の遅延損害金を請求することができます(最高裁昭和50年7月17日判時783号128頁江東ダイハツ自動車事件)。

 請求する期限

付加金の請求は、会社に違反があったときから2年以内にしなければなりません。

すなわち、2年以内に裁判所にアクションを起こさなければ付加金の支払いを受けることができなくなってしまいます。

 労働審判で付加金の請求ができるか

残業代などの支払いを求める訴訟を起こした場合、付加金の請求もできることは問題ありません。

では、労働者は、労働審判の申立てにおいて付加金の請求はできるのでしょうか。

多くの裁判所では、労働基準法が付加金の支払いを命令する主体を「裁判所」と定めていて、労働審判で決定するのは「労働審判委員会」であるため、労働審判では付加金の支払いを命令することはできないとしているようです。

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ただ、そうすると、例えば会社の違反から2年が経過する前に、付加金の請求をせずに労働審判を申し立てたところ、労働審判をしている間に2年が過ぎてしまった場合、その後労働審判に対して異議が出されて(労働審判法21条)通常の訴訟に移ったとしても、裁判所はもう付加金の支払いを命令することができないことになります。

他方で、付加金の支払いを命じる労働審判は認められないとする裁判所であっても、労働審判の申立ての際に付加金を請求すること自体は禁止しない方針のようです。

労働審判を申し立てる時点で付加金の支払いを請求しておけば、労働審判中に2年が経過してしまっても、その後労働審判に対して異議が出され通常の訴訟に移った場合、労働者は労働審判を申し立てた時点で付加金の請求をしていることになる(労働審判法22条)ので、付加金の請求ができなくなるというわけではありません。

使用者が考慮すべきこと

このように、労働者としては、残業代などを労働審判で請求する場合でも、付加金も請求しておく場合があります。しかし、労働審判の段階で解決すれば、使用者が付加金の支払いを命令されることはないのです。

この付加金リスクを避けるために、多少納得がいかない解決であっても、労働審判段階で解決するということを考えてみてください。

(弁護士 田島寛之)