私選刑事事件の弁護士費用 の適正な額ってどれくらい?

私選刑事事件の弁護士費用

法律事務所の広告手法の問題については、2014年10月に某法律事務所のホームページに私が所属弁護士であるかのような表示がなされていた件を発端に色々考えました。

弁護士会の公設事務所出身で刑事事件や消費者事件を多く扱ってきた私としては、以前から刑事事件の弁護士費用についての広告について関心があり、調査したところ、ちょっと高すぎない!?と思われるような料金設定をしている法律事務所も見受けられました。

私選刑事事件の弁護士費用 の適正な額ってどれくらい?と疑問に思われる方も多いと思います。もちろん事前に十分な説明を受けて、納得していれば何の問題もないのですが、中には説明として疑問符を付けざるをえない広告もありました。

今回は、わかりにくいとされる弁護士費用、とりわけ私選刑事事件の弁護士費用 について、書いてみようと思います。

 

弁護士費用のルール

弁護士費用については、昔は弁護士会が作った「報酬基準」があったけれど今はなくなって自由化された、ということはご存知の方も多いかもしれません。

しかし、まったく自由に決められるかというとそうではありません。「経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない」弁護士の報酬に関する規程第2条)というルールがあります。

どれくらいが「適正かつ妥当」なのかの参考として、弁護士会は「市民のための弁護士報酬ガイド」を作成しています。

私選刑事事件の弁護士費用 広告の問題点

弁護士費用の中でも、特にわかりにくいと言われているのが、私選刑事事件の弁護士費用 です。刑事事件は、逮捕→起訴→裁判と様々な段階があったり、弁護士の活動も本人との接見、身体拘束からの解放を目指す活動、被害者との示談等色々あることが原因だと思われます。

「刑事弁護専門」「刑事事件に強い」などと謳っているいくつかの法律事務所の弁護士費用をホームページで見てみたのですが、「そこで追加料金とるの!?」とか、「結局トータルすごく高くない!?」というのを見つけてしまったので、いくつか紹介したいと思います。

・被害者がいる場合に着手金追加
←刑事事件ってほとんど被害者いますよね。。。

・預託金としてあらかじめ払わないといけない
将来必要となる弁護活動の費用という名目のようです。でもそれって、活動すればするほど追加料金が発生する仕組みを作っているからでは?

・短時間でも出張日当が発生
例えば、本人に会いに警察署に行って1時間接見した場合、往復の移動時間が10分以内でも日当が発生するようです。

他にも、被害者と示談するたびに成功報酬が発生したりと、弁護士が活動すればするほど追加料金が発生する仕組みになっています。
それだと、依頼している側からすれば、色々活動してもらいたいけど、追加でお金かかってしまうから頼むのを躊躇したり、逆にあらかじめ預託金として払っているので終わってみたらお金がほとんど返ってこなかったということもあると思います。

もちろん、弁護士として責任ある仕事をするため、安すぎるというのもそれはそれで問題だと思います。ただ、事案の難易度や労力に応じて、「適正かつ妥当」な費用であることで依頼者も納得し、「この弁護士に頼んでよかった」という「安心」「満足感」につながるのではないでしょうか。

また、弁護士と個人の依頼者との契約にも消費者契約法は適用されるため、どのような場合に追加費用が発生するか等について説明しなかった場合は契約を取り消すことができたり、弁護士費用の返金を求めたりすることができる場合があります。

弁護士田島寛之の私選刑事事件の弁護士費用

では、弁護士田島寛之の場合はということになりますが、弁護士費用のページに記載しているように、旧弁護士会の報酬基準に準拠しています。

身体拘束の解放活動(勾留阻止や保釈等)、被害者との示談、本人との警察での接見などは、着手金・報酬金の中に含まれており、別途請求することはありません。
参考にしていただければ幸いです。

相談予約・お問い合わせは、
電話 03-6434-5881 まで
「ホームページを見た」旨お伝えください。

 

 

 

 

金融商品取引法の概要

金融商品取引法について発表する機会を得たので、ざっくりですが書いてみようと思います。

金融商品取引法の概要

金融商品取引法は、主に国債や株式などの有価証券についてのルールを定めています。元々は証券取引法という法律でしたが、ファンドなどの新しい金融商品が出てきたり、日本市場の公平性や透明性を高めて国際市場としての魅力アップを図るなどのため、平成18年に金融商品取引法として生まれ変わり、翌19年から施行されています。

この法律の柱は、以下の4つです。

①投資判断のための情報開示

会社の概要や業績などが書かれた有価証券報告書などを見て、どの会社に投資するか決めるための情報開示のルール

②金融商品を扱う業者に対する規制

金融商品の勧誘や販売をする際のルール

③取引所の規制

東証やJASDAQなどの取引所に関するルール

④不正行為の規制

インサイダー取引や株価人為的操作などの禁止

 

ライブドアや村上ファンドの事件は記憶に新しいかもしれませんが、世の中の流れとして、貯蓄から投資へと動いている今、自己責任の原則が根底にある金融市場におけるルールを知っておくことは大切だと思われます。

関連リンク

金融商品取引法の概要については、金融庁のホームページにも載っています。

ストレスチェック制度のポイント

労働安全衛生法が改正され、2015年12月から、従業員が50人以上いる事業所では、毎年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられました。

今回は、このストレスチェック制度のポイント を紹介します。
なお、厚労省のサイト導入マニュアルもありますので参考にしてみてください。

ストレスチェックとは

「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問(選択式)に従業員が回答し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

その目的は、精神障害による労災が増えていることを受け、従業員が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように気を付けたり、高いストレス状態の場合は医者と面接してアドバイスをもらったり、会社に職場環境の改善をしてもらうことで、「うつ」などの精神的な不調を未然に防ぐことにあります。

5つのポイント

ストレスチェック制度のポイントは主に5つです。

①会社自身ではなく、医師や保健師などが実施する
ストレスチェックを実施する(実施者といいます)のは、会社自身ではなく、医師や保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保険福祉士の中から選びます。
通常は産業医などが想定されていますが、外部委託も可能です。

②3つの種類の質問が含まれている必要がある

ストレスチェックの質問票には、「仕事のストレスの原因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」に関する質問が含まれている必要があります。
質問票の指定は特にありませんが、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票というものもあります。
なお、今後厚労省が、オンラインでのストレスチェック実施プログラムを無料で公開する予定とのことです。

③結果は実施者から直接本人に通知、会社は本人の同意なしに結果を入手してはだめ

この制度は、会社が高いストレスを抱えている従業員をあぶり出すためのものではありませんし、従業員としても勝手に会社に見られるとなると、本音で回答しずらいですね。

④会社は医者の面接指導や適切な措置をしないといけない場合も

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員から会社に申し出があった場合、会社は医者による面接指導をしなければいけません。
逆に、従業員から申し出がなければ、面接指導を無理に実施することはできません。
面接指導の結果、会社は医者の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の変更、職場の変更、労働時間の短縮などの適切な措置を講じなければなりません。

また、実施者はストレスチェックの結果を職場ごとに分析し、それを受けて会社は、職場環境を改善することに努めなければいけません。

⑤従業員に対する不利益取扱いの禁止

面接指導の申出を理由として従業員に不利益取扱いを行うことは法律上禁止されます。
ほかに、ストレスチェックを受けないこと、会社への結果の提供に同意しないこと、高ストレスと評価されたのに面接指導を申し出ないことを理由とした不利益な取扱いや、面接指導の結果を理由とした解雇、雇止め、退職勧奨、不当な転勤なども行ってはいけません。

中小企業の場合は

事業所の従業員が50人に満たない中小企業の場合、ストレスチェックの実施は法的な義務ではなく努力義務ですが、職場環境を改善し、業績アップにつなげるためにもやってみる価値はあると思います。

その場合、産業医はいない会社が多く外部委託ということになりますが、全国労働衛生団体連合会が実施しているストレスチェックサービスというのがあります。
料金は一人あたり600円と高くないので、定期健康診断と併せて実施してみるのも良いかもしれません。

司法修習生向け犯罪被害者支援研修の指導担当を務めました

2日間にわたり、司法修習生向け犯罪被害者支援に関する研修の指導担当を務めました。

司法修習生は、司法試験に合格して約1年間の研修(司法修習といいます)を受ける法曹の卵です。
今回、東京の修習生向け犯罪被害者支援に関するプログラムの指導担当の一人として携わる機会がありました。

初日午前は、ある事件の被害者遺族の方のお話し、午後は被害者支援都民センターの見学と講義。
2日目午前は、被害者参加制度・損害賠償命令制度の講義、午後は被害者からの法律相談のロールプレイ。

私はこのロールプレイの指導を主に担当しました。修習生が相談者役、現役の弁護士が弁護士役として、架空の事例を元に法律相談を行うというものです。

修習生たちは積極的に取り組んでいましたが、講義などで弁護士の言葉による二次被害が少なくないことを学んでいたからか、「これを聞いて良いのだろうか」「どう答えたら良いのだろう」と考え過ぎてしまい、固まってしまうような場面も見られました。

被害者の気持ちと同じ気持ちになることはできません。なぜなら、その被害に遭ったのは被害者や遺族であって、私たちはその被害に遭っていないからです。
でも私は、その気持ちにできるだけ寄り添えればという気持ちで、話を聞くようにしています。
同じ気持ちになることはできないけれど、できるだけ近づこうとすることはできます。

その姿勢があれば、相手が言われて嫌なこと、どういう言葉を使えば相手に伝わりやすいかということは分かってくるのではないかと思います。ましてや、「お気持ちは分かります。」という言葉は出てこないはずです。

法律相談にマニュアルはありません。法律のプロとして、法律や制度の知識があることは大前提で、あとは人対人のコミュニケーションなのではないかと思います。

法律の専門家として、また人としての成長のため、これからも研鑽を積まなければと私自身も再認識する機会になりました。

マイナンバー入門(中小企業向け)

いよいよマイナンバーが今年10月から通知され、来年(平成28年)1月から利用が始まります。

中小企業の経営者の方の中には、「なんとなくは分かっているけど、何をすれば良いかわからない。」という方も多いと思います。

そこで今回は、「マイナンバー入門」と題して、マイナンバーについて5つのポイントを紹介したいと思います。

ポイント①:税金と社会保険の手続で使う

使う場面ですが、民間企業では、税金と社会保険の手続でマイナンバーを使います。
税金関係では、源泉徴収票、給与支払報告書などを作成するときに従業員のマイナンバーが必要になります。
社会保険関係では、健康保険、雇用保険、厚生年金などの手続で使います。
いずれも、来年1月以降税金や社会保険の書類の様式が変わり、マイナンバーを書く欄が追加されます。

ポイント②:利用目的はきちんと通知または公表を、本人確認もしっかり

第三者のマイナンバーを取得する際は、事前に利用目的を通知または公表する必要があります。ex.「源泉徴収票・給与支払報告書にマイナンバーを書いて提出します。」と社員にメールする、社内掲示版に記載するなど。
また、マイナンバーを取得する際は、来年1月から交付が始まる「個人番号カード」や運転免許証での本人確認をしっかり行わなければいけません。

ポイント③:利用は法律で認められた手続のみ、顧客管理などでの利用はNG

マイナンバーを利用できるのは、法律で認められた税金と社会保険の手続のみで、それ以外(ex.社員番号や顧客管理番号として使う)は、たとえ本人の同意があってもできません。

ポイント④:必要がなくなったら廃棄する

必要がなくなった場合(ex.社員が退職して保険等の手続が不要になった場合)は速やかに廃棄・削除しなければいけません。
逆にいえば、雇用が続く場合は保管し続けることができます。

ポイント⑤:取り扱う担当者を決めるなど管理をしっかりと

これまでも個人情報の取扱いは気を付けていると思いますが、マイナンバーはより厳格な管理が求められます。
例えば、マイナンバーが書かれた書類は鍵付きの棚や引き出しに保管、パソコンにウイルス対策ソフトを導入する、シュレッダーを用意するなどの対応が必要です。
また、故意に漏えいさせるなどした場合は罰則もあるので、注意が必要です。

 

いかがでしたか?マイナンバーについて、少し具体的にイメージできたでしょうか。
もっと詳しく知りたいという方については、政府広報オンラインに分かりやすく書かれていますので、そちらを参照してください。「導入チェックリスト」もあります。

夏季休業期間のお知らせ

平素は格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。

誠に勝手ながら、下記のとおり夏季休業とさせていただきます。

夏季休業期間 8月13日(木)〜16日(日)

ご迷惑をおかけいたしますが、
何卒ご了承のほどお願い申し上げます。

平成27年 立秋

 

 

弁護士の懲戒処分(業務停止)について

先週のことになりますが、テレビ番組にサクラサイトの被害者として、法律事務所の事務員2人を出演させた弁護士に業務停止2ヶ月の懲戒処分が出されたというニュースに接しました。

この弁護士がしたことがどれだけひどいか、処分が重いか軽いかはここでは置いておくとして、今回は業務停止処分がどういうものか紹介したいと思います。

弁護士の懲戒処分は、重い順に、

①除名
②退会命令
③二年以内の業務の停止
④戒告

となっています(弁護士法57条第1項)。

今回は2ヶ月の業務停止なので③ですね。

業務停止2ヶ月と聞いて、なかには、「2ヶ月間弁護士として仕事をせずにおとなしくしてればいいのね。」と思う方もいると思います。
例えば、新しい事件の依頼は受けることはできないけれど、現在受任している事件の裁判期日は延期してもらって、顧問契約も契約自体は継続できるなど。
私も、弁護士になりたての頃はそんなふうに思っていました。

ですが、実はかなりのことができなくなるんです。
「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準」という規則で決められています。

新しい事件の依頼を受けられないのはもちろん、裁判期日の延期も認められないので代理人を辞任し、顧問契約も解約しなければいけません。
事務員の雇用は継続できますが、弁護士・法律事務所であることを表示する表札、看板等の一切の表示を除去しなければならず、名刺を使うのもダメ、弁護士バッチは返却しなければなりません。

つまり、業務停止期間中は弁護士という身分から離れなければならないということになります。
依頼者や顧問先に事情を話さなければならず、信頼を取り戻すのは簡単なことではないと思います。

もちろん、懲戒処分を受けるようなことをしなければよいのですが、こういうニュースに接するたびに、身が引き締まる思いです。

 

 

 

経営の仕組み構築と事業再生

中小企業診断士・経営コンサルタントの方が講師の勉強会に参加しました。
今回のテーマは、「経営の仕組みと事例 〜仕組みの構築による改善〜」です。

業務の改善や事業の再生のためには、経営の仕組みを構築し、継続することが重要。営業・販売での日報管理、企画・開発でのガントチャート(作業の進捗を示す横棒グラフ)による管理、生産での原価の詳細把握等、様々な場面での仕組み作りが重要という内容でした。

これまで数多くの危機的企業の中に入っていき、その会社と共に再建してきた経験に基づく、具体的な数字を用いたお話は、とても説得力があり、大変勉強になりました。

事業再生についての勉強会は継続して出席していますが、事業再生において、「数字での分析・把握・管理」が一つのキーワードとして上げられると思います。精神論ではなく、数字を用いることにより、客観的な会社の姿を認識することを可能にします。
抽象的に会社が危ないと伝えるのではなく数字を示すことにより、社長に再建へのやる気を出してもらう、また、例えば部門ごとに数字で分析・把握することで、より効果的な対策をとることができることを学びました。

今後も、経営者と一緒になって会社を良くしていくことできる弁護士を目指して、研鑽を積んでいきます。

 

有価証券報告書の読み方と企業分析

有価証券報告書の読み方と企業分析についての勉強会に参加しました。

有価証券報告書とは、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業の概況や事業内容、財務諸表などが記載されている外部への開示資料です。

有価証券報告書に虚偽記載をした場合は罰則や上場廃止となる可能性があるため、この書類に記されている企業情報は、信憑性が高いといえます。

有価証券報告書には、その会社の企業活動の具体的な経過や成果、さらには将来の事業計画が書かれているため、単年度の会社の状況を切り取った決算書を見るよりも、会社の過去、現在、未来が分かります。

また、有価証券報告書には、その会社がどのような企業グループを形成しているか、従業員の状況、会社内部の事業分野別の営業成績まで書かれています。

さらには、同じ業界の会社の有価証券報告書を読み比べることで、業界全体の共通の課題などを把握することもできます。

有価証券報告書を分析することにより、様々な経済の動きがその会社に与える影響や業界特有の問題点を踏まえたアドバイスに役立てることでき、より会社に寄り添い、共に良くしていくお手伝いが可能になると感じました。
今後の実務に活かせる非常に有意義な勉強会でした。