中小企業専門家育成講座(第三者承継の基礎)

私が所属する弁護士業務改革委員会中小企業部会による中小企業専門家育成講座が始まりました。今回は「第三者承継の基礎」。講師は池内稚利弁護士でした。

中小企業経営者の高齢化が進む中、少子化等の影響から、親族内で後継者を確保することが難しくなってきており、M&A等による事業承継の必要性が高まっています。

中小企業庁も、今年4月に「事業引継ぎガイドライン」を策定する等、政策として力を入れている分野です。

今回の講義は、中小企業におけるM&Aのニーズの高まりを受けて、弁護士が関わる際の基本的な知識と注意点を学ぶことがメインでした。

中小企業のM&Aでは、会社と経営者の資産が明確に区別されていない等の中小企業特有の問題点が顕在化することがあるため、注意が必要です。

これまでは、売り手と買い手のマッチングに仲介業者が入るケースが多く、弁護士が関与するケースは多くはありませんでしたが、譲渡後のトラブルを防止する意味においても、弁護士が法務面の調査だけでなく、アドバイザーとしての役割を果たすことが求められているといえます。

 

調停人養成講座

私も所属している日本仲裁人協会主催の調停人養成講座入門編を受講しました。講師は、元裁判官で家庭裁判所の事件を多く取り扱ってきた上原裕之弁護士でした。

タイトルは「調停における臨床力」。

当事者のニーズを見つける、当事者の思いや気持ちを受けとめ、問題を共有してともに悩んでいく、知識やマニュアルは頭を使わない、当事者と共同作業しながら問題を乗り越えていくための方策を考える、などなど盛りだくさんの内容でした。

法律家は知識があることで、目の前のケースについて、法律だとこうなるとか、裁判になるとこういう判断になるというある程度の予測から、調停の場でもその結論に導こうとしてしまいがち。それでは、当事者が納得する実のある話し合いはできないと思います。

私は家裁等での調停委員の経験はありませんが、調停の申立代理人になることはあります。個人的な感想ですが、これまで出会った調停委員で、「素晴らしい調停委員だな」と思った人は今のところいません笑。中には、話をきちんと聞いてくれてないと感じてしまう人もいます。

対立する当事者双方の話を聞き、解決の糸口を探していく調停人の仕事は、苦労することも多いだろうなと感じています。

今回、この講座を受講したのは、私が事件管理者として携わっている立教大学観光ADRの職務に役立てばということと、将来機会があれば調停委員をやることも少し考えているからです。

今日の上原弁護士の話は、小手先のテクニックではなく、調停人としてのマインドや姿勢について、基本的かつ重要な事柄でしたので、大変勉強になりました。

なお、上原弁護士によると、「知識はいったん記憶した上で、その後無意識化させるのがよい。したがって、本日の話も忘れることが望ましい。」とのことです笑。