相続・遺言のルールが変わる!?( 民法改正の中間試案 )

民法(相続関係)の改正に関する中間試案

法制審議会の民法(相続関係)部会が、民法改正に関する中間試案をまとめたとのニュースが入ってきました。
現行の相続・遺言のルールが変更になるこの中間試案について概要を紹介します。

なお、当部会の議事録や資料は公開されており、6月22日現在、6月21日開催の議事録等はアップされていません。そのため、5月17日開催の会議資料「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案のたたき台」を基に説明します。

相続関係

主な改正内容としては、
①配偶者の居住権を保護するための方策(短期居住権(遺産分割終了時まで)、長期 居住権(終身・一定期間))

②配偶者の相続分の見直し(配偶者の相続分を増やす方向、ex.相続人が配偶者と子どもの場合結婚してから20~30年経過している場合は、配偶者の相続分を3分の2とする(現在は2分の1))

③遺留分の算定方法等の見直し

④相続人以外の者の相続財産への貢献を考慮するための方策(現在は相続人のみ認められている寄与分の制度ですが、相続人以外が金銭の支払を請求できるようになる(ex.被相続人の息子の妻による療養看護))

遺言関係

主な改正内容として、
①自筆証書遺言の方式緩和(現在は、すべて本人の手書きで書く必要がある(民法968Ⅰ)が、遺贈等の対象となる財産の特定に関する事項(不動産や預貯金の表示)は手書きでなくてもよいとする)

②加除訂正の方式について(現在は変更箇所に「署名及び押印」が必要とされている点(民法968Ⅰ)を改め、署名のみで足りるものとする)

③自筆証書遺言を公的機関で保管してもらう制度の創設

改正の影響は?

方向性としては、相続関係については配偶者の権利を多くする、遺言関係については自筆証書遺言を書きやすくして利用を増やすというものですね。

そもそもこの見直しは、「27年2月、当時の上川陽子法相が法制審に諮問。高齢化社会の進行で相続をめぐるトラブルの増加が予想されることから、国民の意識や実情に即して相続法制を見直す必要があると判断していた」とのことです。
ですが、この改正がトラブルの回避や早期解決に役立つかというと必ずしもそうとはいえないと思います(特に相続人以外の金銭請求の制度)。

また、被相続人が高齢の場合(ほとんどがそうです)、今度は被相続人の配偶者が近いうちに亡くなり、再び相続の話になることが予想されます。
今回の改正で、配偶者の相続分を増やすことで、相続税の基礎控除額が減額されたこととあいまって、その配偶者の相続の際にも相続税が発生するケースが増えることが容易に想定され、相続税の増税の面もありますね。

今後ですが、7月からパブリックコメントを行い要綱案を作成、早ければ2017年の通常国会に民法改正案を提出するとのことです。
今後も注目していきたいと思います。