日曜劇場『99.9- 刑事専門弁護士 -』の法律監修について

『99.9- 刑事専門弁護士  -』の法律監修は誰?

新ドラマ『99.9- 刑事専門弁護士』始まりましたね。
法律事務所の刑事事件専門チームの弁護士を描いたドラマ、私も第一話を観ましたが、続きが楽しみです。

さて、弁護士のドラマが始まると聞くと、「法律監修は誰がやってるんだろう?」ってすぐ思ってしまうのは職業病ですかね笑。

第一話のエンドロールに注目していると、

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ありました!

法律監修3名、取材協力4名(法律事務所含む)とかなりの人数ですね。
國松崇弁護士はTBS初の社員弁護士のようですが、刑事弁護で著名な弁護士も多く含まれています。

元々は違う弁護士が担当だった?

そうしたところ、元々は違う弁護士が担当だったのではないかという情報が流れてきました。
「TBSドラマ「99.9-刑事専門弁護士」について、アトム法律事務所の岡野武志弁護士が「法律監修を担当することになりました」とのサイト記事を作成していた」

確かに岡野武志弁護士の写真付き記事を見ると、2016年2月25日と書いてあるので、その時点では担当する予定だったと思われます。

テレビ局と弁護士

近頃は弁護士もテレビによく出ていますが、興味深い記事を見つけました。
「地獄の弁護士業界に追い打ち!テレビ局、起用弁護士の選別強化&NGリスト作成」

この記事の中には、私が以前ブログ「弁護士のマスコミ対応 ( 清原元選手覚せい剤 所持事件を題材として)」でも書いた、実際は清原元選手の弁護人ではなかった騒動も触れられています。

この記事に書かれている流れで今回の法律監修の担当が変更されたのか実際のところは分かりませんが、テレビは非常に大きな影響を与えるメディアなので、出演等する弁護士をきちんと選ぶということは重要なことだと思います。

 

 

「 ツマミグイ 」赤坂見附店閉店についてのマーケティング的分析

約9か月で閉店

回転寿司で有名な「スシロー」の新業態「ツマミグイ」赤坂見附店が、2016年3月25日で閉店しました。開店したのが2015年6月19日なので、約9か月で閉店したことになります。

この店は事務所から歩いてすぐの場所にあったので、いつも目には入っていましたが、私自身一度も入ることはなくいつも空いているように見えたので、大丈夫かなと心配していたのですが、やっぱり閉店してしまいました。

赤坂見附は飲食店が多く激戦区だとは思います。ただ、閉店までが非常に早かったため、その原因について分析してみたくなり、今回はマーケティングの視点から考えてみようと思います。

マインドフロー

今回は「マインドフロー」というツールを使って分析してみます。

マインドフロー」は、マーケティングコンサルティング会社代表で中小企業診断士の佐藤義典氏が考案したマーケティングのツールです。

佐藤氏は、お客がファンになるまでには7つの関門があるとして、どこかの関門で止まってしまうときには、その商品を買わないしファンにならないとしています。

なお、私は佐藤氏のことを、『ドリルを売るには穴を売れ』という本で知って、今ではメーリングリストも購読しているファンの一人です。

7つの関門

①認知:知らなければ興味も持たない

②興味:興味がなければ無視するか忘れる

③行動:ネットで検索したり、資料請求する

④比較:値段や性能などを他と比べて、勝ってなければ買わない

⑤購買:比較した結果買ってみる

⑥利用:食べ方・使い方がよく分からなかったら使わない

⑦愛情:リピーターになったり友達に勧める

普段みなさんが何かを買ったり食べたりする場合、必ずと言っていいほど、この流れを踏んでいると思います。

私も、例えば飲み会の幹事になった場合、普段から見かけていて気になっているお店(①認知・②興味)があって、そこにしようかなと思った場合、そのお店をネットで検索して(③行動)、食べログなどのサイトでクチコミや評価を他と比べて(④比較)、良さそうなら使ってみて(⑤購買・⑥利用)、満足したらまたの機会に使ってみたり友達に「あそこよかったよ」と話したりしています(⑦愛情)。

「 ツマミグイ 」赤坂見附店の場合

以下は私個人が感じた「マインドフロー」です。

①認知:普段から店の前を通っていて、あることは知っていた→〇

②興味:新しくできたので、どんなお店なんだろうと興味をもった→〇

③行動:ネットで検索してみたら、「スシロー」の新業態だということが分かった。「スシローってこんな店も出してるんだ」、一度ランチで行ってみたくなった→〇

④比較:お店の前のランチメニューを見てみたら、一番安くて900円(税別)であとは1200円(税別)と1500円(税別)。正直すごく高く感じた。
また、お店の中を見てみると、道路から奥まっているからか、暗くて入りずらい雰囲気で、入る気がしなかった→× ※写真は閉店後
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改善するなら?

以上私の場合ですが、「マインドフロー」の④比較の関門で止まってしまいました。

では改善点ですが、まずは値段設定。
確かに「 ツマミグイ 」赤坂見附店近くに、少なくとも私は寿司屋があることを知らないので、お寿司を食べたい人にとっては③興味まではたどり着くのかもしれませんが、周辺のランチの値段設定は大体が900円以下です。
「寿司」というジャンルで考えればそこまで高くないのかもしれませんが、「赤坂見附でのランチ」という「戦場」では高さが際立ってしまっています。

次に立地。
赤坂見附駅からは歩いて1分ほどなので場所としてはOK。
ただ、道路から店に入るまでに少し歩かなくてはいけないのは面倒くさいし、道路から店の中が見えづらいのは入るのにけっこう勇気がいります。
内装にはこだわっていて高級な雰囲気だったようなので、道路を歩いていても中の雰囲気が分かる立地の方が良いと思います。

弁護士業界にも当てはまる

以上、近所に事務所を構える弁護士による分析でしたが、「マインドフロー」の考え方は、弁護士を選ぶ際にも当てはまると思います。

知り合いなどの紹介であれば、①認知、②興味、③行動くらいまでは止まらずに進むかもしれませんが、一から弁護士を探す場合、まずは①認知から始まります。

また、実際に仕事を依頼して(⑤購買、⑥利用)みたけれど、対応に満足できなかった場合は、⑦愛情の部分で止まってしまい、また頼んだり誰かに紹介しようとは思わないでしょう。

今回は身近な飲食店を題材にしましたが、私自身の業務についても常に「マインドフロー」のどこかで止まってはいないか考えていこうと思います。

 

賃金未払いで 労基署に逮捕 される!?

労基署が異例の逮捕

2016年3月22日、「労基署が異例の逮捕=賃金未払いの社長ら-岐阜」というニュースが入ってきました。

報道によると、中国人技能実習生に賃金を適切に支払わず、労基署の調査も妨害したとして、岐阜労働基準監督署は22日、最低賃金法と労働基準法違反容疑で、縫製会社社長と技能実習生受け入れ事務コンサルタントを逮捕した。
逮捕容疑は、2014年12月~15年8月、中国人技能実習生の女性4人に最低賃金計約165万円と時間外手当計約310万円を支払わなかった上、虚偽の賃金台帳を提出するなど労基署の調査を妨害した疑いとのことです。

「労基署に逮捕 される!?警察でもないのにできるの?」って思われる方もいると思いますが、実はできるんです。

今回の事件について、どのような法律違反があって、どのような根拠に基づいて労基署が逮捕に至ったのか紐解いてみようと思います。

外国人技能実習制度とは

そもそも、外国人技能実習制度というのは、開発途上国等の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、雇用関係の下、日本の産業・職業上の技能等を修得・習熟をしてもらうというものです。
会社としては、人件費を安くできる、一定期間人材を確保できるなどのメリットがあるようです。

ただ、技能実習といえども雇用関係として働くため、日本の労働関係法令が適用されます。
今回逮捕された社長らは、この点を知らなかったのか、知っていて払っていなかったのか分かりませんが、認識が甘かったといえるでしょう。

最低賃金法

最低賃金を払わない、これは最低賃金法4条1項違反で、罰則は50万円以下の罰金です(同法40条)。

地域によって最低賃金が決まっているのはご存知の方が多いと思います。
平成27年度は、岐阜は754円、ちなみに東京は907円です(厚生労働省ホームページ)。

残業代未払いは犯罪行為

次に、残業代未払の点、これは労働基準法37条違反で罰則は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金です(同法119条1号)。
残業代を払わないことは犯罪で、しかも懲役刑が定められていることはあまり知られていないかもしれません。

労基署の調査を妨害

さらに、労基署の調査に対し妨害、これは労基法・最低賃金法どちらにも規定があり、罰則は30万円以下の罰金です(労基法120条4号・最低賃金法41条3号)。

また、労基署(正確には労働基準監督官)の逮捕権限ですが、これもきちんと法律の根拠があり(労基法102条・最低賃金法33条)、警察官の職務を行うとされています。

このようなことにならないためには?

労基署によると、逮捕にまで至るのは異例とのことなので、今回のケースはかなり悪質だったと思われます。
ただ、逮捕までいかないまでも、最低賃金や残業代を支払わないことは法律違反であることは間違いないので、まずはきちんと支払うことが重要です。
仮に、労基署の調査が入った場合でも、虚偽の賃金台帳を提出するなどの隠ぺいはせず、誠実に対応することが、最悪の結果を回避するための手段といえるでしょう。

※残業代についてもっと詳しく知りたい方、残業代を請求されたけれどもどう対応したらよいか分からない経営者の方は、私がメンバーとして参加している「中小企業残業代119番」もご覧になってみてください。

 

認知症JR事故最高裁判決 の要点解説

認知症JR事故最高裁判決

2016年3月1日、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)において、愛知県で2007年徘徊中に電車にはねられ死亡した認知症の男性(当時91歳、「Aさん」といいます。)の妻と長男にJR東海が損害賠償を求めた訴訟の上告審判決(以下「判決」といいます。)が出されました。

裁判官全員一致で結論として、妻の責任を認めた第二審の判断を覆し(一審では妻・長男ともに責任肯定)、妻に責任はないとしました。

判決の全文は当日のうちに裁判所のホームページにアップされています。

争点

民法713条では、精神上の障害によって自分の行為の責任を理解する能力がない人(「責任無能力者」といいます。)が、他人に損害を加えた場合、本人は賠償責任を負わないとしています。
では、誰が責任を負うかというと、民法714条1項で、責任無能力者を監督する法定の義務を負う人(「監督義務者」といいます。)が原則として賠償責任を負う、ただし、監督義務者が義務を怠らなかったときや義務を怠らなかったとしても損害が生じるときは、責任を免れるとなっています。

また、直接に監督義務者に当たらない場合でも、判例は、監督義務者に準ずべき人(「準監督義務者」といいます。)については、責任の主体となり得ることを認めてきています(最高裁昭和58年2月24日第一小法廷判決参照)。

今回の最大の争点は、妻と長男が、民法714条の監督義務者または準監督義務者に当たるかでした。

判決の要点

判決の要点は、以下の5つです。

精神保険福祉法上の保護者(以下「保護者」といいます、平成25年に廃止)や成年後見人であることだけでは直ちに監督義務者に該当するということはできない。

同居する配偶者だからといって、直ちに監督義務者に当たるとすることはできない。

責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らして、第三者に対する加害行為の防止に向けて、責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合は、準監督義務者として民法714条1項が類推適用される。

④その上で、準監督義務者に当たるか否かは、その者自身の生活状況や心身の状況などとともに、精神障害者との親族関係の有無・濃淡、同居の有無その他の日常的な接触の程度、精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情、精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容、これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して、その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であるなど公平の見地からその者に対し精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべきである。

本件の妻は、当時85歳で要介護1の認定を受けていて、介護も長男の妻の補助を受けて行っていたこと、長男は20年以上も同居しておらず、本件事故直前の時期も1か月に3回程度週末に訪ねていたにすぎないこと等から、両人ともAさんの第三者に対する加害行為を防止するためにAさんを監督することが可能な状況にあったとはいえず、その監督を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。

補足意見と二つの意見

今回の判決には、木内道祥裁判官の補足意見と岡部喜代子裁判長・大谷剛彦裁判官の意見が出されています。補足意見は判決の理由の補足説明で、意見というのは、判決に結論は賛成だけれども、理由が違う等で裁判官個人が意見を表明するものです。

木内裁判官の補足意見は、保護者の他害防止監督義務、後見人の事実行為としての監護義務が削除された経緯、精神障害者本人の保護の観点、介護の引受けと監督の引受けは区別されることなどについて、分かりやすく書かれています。

また、二人の裁判官の意見は、長男については、Aさんの介護体制の中心的な立場にあったとして、準監督義務者に該当するけれども、義務を怠らなかったとして免責されるとしている点は共通していますが、さらに、成年後見人の成年被後見人に対する身上配慮義務から第三者に対する加害防止義務を導き出すか否かで意見が分かれています(岡部裁判長は否定、大谷裁判官は肯定(長男は成年後見人に選任されてしかるべき者)。

以上のとおり、裁判官の中でも様々な意見が出され、議論されたことがうかがわれます。

判決の解説と私見

今回の判決は、介護する家族等が準監督義務者として責任を負う場合についての基準を打ち出しました。
この基準からすると、基本的には責任を負うケースはかなり限定されると思われます。

一方で、今回損害を被ったのは企業でしたが、私たち個人が被害に遭うというケースも想定されます。その場合、責任を取る人が誰もいないということになると、被害者は救われないことになります。この点については、保険等の活用の余地があるのではないでしょうか。

また、今回Aさんは、駅のホーム先端のフェンス扉を開けてホーム下に下りたあと、電車にはねられたわけですが、もしフェンス扉に施錠がされていれば事故は起きなかったかもしれないことを考えると、鉄道会社においても、事故の予防措置として、立ち入り禁止区域等へ入れないよう施錠の徹底や、ホームドアの設置を完備する等の対応が必要だと考えます。

 

金融商品取引法の概要

金融商品取引法について発表する機会を得たので、ざっくりですが書いてみようと思います。

金融商品取引法の概要

金融商品取引法は、主に国債や株式などの有価証券についてのルールを定めています。元々は証券取引法という法律でしたが、ファンドなどの新しい金融商品が出てきたり、日本市場の公平性や透明性を高めて国際市場としての魅力アップを図るなどのため、平成18年に金融商品取引法として生まれ変わり、翌19年から施行されています。

この法律の柱は、以下の4つです。

①投資判断のための情報開示

会社の概要や業績などが書かれた有価証券報告書などを見て、どの会社に投資するか決めるための情報開示のルール

②金融商品を扱う業者に対する規制

金融商品の勧誘や販売をする際のルール

③取引所の規制

東証やJASDAQなどの取引所に関するルール

④不正行為の規制

インサイダー取引や株価人為的操作などの禁止

 

ライブドアや村上ファンドの事件は記憶に新しいかもしれませんが、世の中の流れとして、貯蓄から投資へと動いている今、自己責任の原則が根底にある金融市場におけるルールを知っておくことは大切だと思われます。

関連リンク

金融商品取引法の概要については、金融庁のホームページにも載っています。

ストレスチェック制度のポイント

労働安全衛生法が改正され、2015年12月から、従業員が50人以上いる事業所では、毎年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられました。

今回は、このストレスチェック制度のポイント を紹介します。
なお、厚労省のサイト導入マニュアルもありますので参考にしてみてください。

ストレスチェックとは

「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問(選択式)に従業員が回答し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

その目的は、精神障害による労災が増えていることを受け、従業員が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように気を付けたり、高いストレス状態の場合は医者と面接してアドバイスをもらったり、会社に職場環境の改善をしてもらうことで、「うつ」などの精神的な不調を未然に防ぐことにあります。

5つのポイント

ストレスチェック制度のポイントは主に5つです。

①会社自身ではなく、医師や保健師などが実施する
ストレスチェックを実施する(実施者といいます)のは、会社自身ではなく、医師や保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保険福祉士の中から選びます。
通常は産業医などが想定されていますが、外部委託も可能です。

②3つの種類の質問が含まれている必要がある

ストレスチェックの質問票には、「仕事のストレスの原因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」に関する質問が含まれている必要があります。
質問票の指定は特にありませんが、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票というものもあります。
なお、今後厚労省が、オンラインでのストレスチェック実施プログラムを無料で公開する予定とのことです。

③結果は実施者から直接本人に通知、会社は本人の同意なしに結果を入手してはだめ

この制度は、会社が高いストレスを抱えている従業員をあぶり出すためのものではありませんし、従業員としても勝手に会社に見られるとなると、本音で回答しずらいですね。

④会社は医者の面接指導や適切な措置をしないといけない場合も

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員から会社に申し出があった場合、会社は医者による面接指導をしなければいけません。
逆に、従業員から申し出がなければ、面接指導を無理に実施することはできません。
面接指導の結果、会社は医者の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の変更、職場の変更、労働時間の短縮などの適切な措置を講じなければなりません。

また、実施者はストレスチェックの結果を職場ごとに分析し、それを受けて会社は、職場環境を改善することに努めなければいけません。

⑤従業員に対する不利益取扱いの禁止

面接指導の申出を理由として従業員に不利益取扱いを行うことは法律上禁止されます。
ほかに、ストレスチェックを受けないこと、会社への結果の提供に同意しないこと、高ストレスと評価されたのに面接指導を申し出ないことを理由とした不利益な取扱いや、面接指導の結果を理由とした解雇、雇止め、退職勧奨、不当な転勤なども行ってはいけません。

中小企業の場合は

事業所の従業員が50人に満たない中小企業の場合、ストレスチェックの実施は法的な義務ではなく努力義務ですが、職場環境を改善し、業績アップにつなげるためにもやってみる価値はあると思います。

その場合、産業医はいない会社が多く外部委託ということになりますが、全国労働衛生団体連合会が実施しているストレスチェックサービスというのがあります。
料金は一人あたり600円と高くないので、定期健康診断と併せて実施してみるのも良いかもしれません。

マイナンバー入門(中小企業向け)

いよいよマイナンバーが今年10月から通知され、来年(平成28年)1月から利用が始まります。

中小企業の経営者の方の中には、「なんとなくは分かっているけど、何をすれば良いかわからない。」という方も多いと思います。

そこで今回は、「マイナンバー入門」と題して、マイナンバーについて5つのポイントを紹介したいと思います。

ポイント①:税金と社会保険の手続で使う

使う場面ですが、民間企業では、税金と社会保険の手続でマイナンバーを使います。
税金関係では、源泉徴収票、給与支払報告書などを作成するときに従業員のマイナンバーが必要になります。
社会保険関係では、健康保険、雇用保険、厚生年金などの手続で使います。
いずれも、来年1月以降税金や社会保険の書類の様式が変わり、マイナンバーを書く欄が追加されます。

ポイント②:利用目的はきちんと通知または公表を、本人確認もしっかり

第三者のマイナンバーを取得する際は、事前に利用目的を通知または公表する必要があります。ex.「源泉徴収票・給与支払報告書にマイナンバーを書いて提出します。」と社員にメールする、社内掲示版に記載するなど。
また、マイナンバーを取得する際は、来年1月から交付が始まる「個人番号カード」や運転免許証での本人確認をしっかり行わなければいけません。

ポイント③:利用は法律で認められた手続のみ、顧客管理などでの利用はNG

マイナンバーを利用できるのは、法律で認められた税金と社会保険の手続のみで、それ以外(ex.社員番号や顧客管理番号として使う)は、たとえ本人の同意があってもできません。

ポイント④:必要がなくなったら廃棄する

必要がなくなった場合(ex.社員が退職して保険等の手続が不要になった場合)は速やかに廃棄・削除しなければいけません。
逆にいえば、雇用が続く場合は保管し続けることができます。

ポイント⑤:取り扱う担当者を決めるなど管理をしっかりと

これまでも個人情報の取扱いは気を付けていると思いますが、マイナンバーはより厳格な管理が求められます。
例えば、マイナンバーが書かれた書類は鍵付きの棚や引き出しに保管、パソコンにウイルス対策ソフトを導入する、シュレッダーを用意するなどの対応が必要です。
また、故意に漏えいさせるなどした場合は罰則もあるので、注意が必要です。

 

いかがでしたか?マイナンバーについて、少し具体的にイメージできたでしょうか。
もっと詳しく知りたいという方については、政府広報オンラインに分かりやすく書かれていますので、そちらを参照してください。「導入チェックリスト」もあります。

弁護士の懲戒処分(業務停止)について

先週のことになりますが、テレビ番組にサクラサイトの被害者として、法律事務所の事務員2人を出演させた弁護士に業務停止2ヶ月の懲戒処分が出されたというニュースに接しました。

この弁護士がしたことがどれだけひどいか、処分が重いか軽いかはここでは置いておくとして、今回は業務停止処分がどういうものか紹介したいと思います。

弁護士の懲戒処分は、重い順に、

①除名
②退会命令
③二年以内の業務の停止
④戒告

となっています(弁護士法57条第1項)。

今回は2ヶ月の業務停止なので③ですね。

業務停止2ヶ月と聞いて、なかには、「2ヶ月間弁護士として仕事をせずにおとなしくしてればいいのね。」と思う方もいると思います。
例えば、新しい事件の依頼は受けることはできないけれど、現在受任している事件の裁判期日は延期してもらって、顧問契約も契約自体は継続できるなど。
私も、弁護士になりたての頃はそんなふうに思っていました。

ですが、実はかなりのことができなくなるんです。
「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準」という規則で決められています。

新しい事件の依頼を受けられないのはもちろん、裁判期日の延期も認められないので代理人を辞任し、顧問契約も解約しなければいけません。
事務員の雇用は継続できますが、弁護士・法律事務所であることを表示する表札、看板等の一切の表示を除去しなければならず、名刺を使うのもダメ、弁護士バッチは返却しなければなりません。

つまり、業務停止期間中は弁護士という身分から離れなければならないということになります。
依頼者や顧問先に事情を話さなければならず、信頼を取り戻すのは簡単なことではないと思います。

もちろん、懲戒処分を受けるようなことをしなければよいのですが、こういうニュースに接するたびに、身が引き締まる思いです。