弁護士の懲戒処分(業務停止)について

先週のことになりますが、テレビ番組にサクラサイトの被害者として、法律事務所の事務員2人を出演させた弁護士に業務停止2ヶ月の懲戒処分が出されたというニュースに接しました。

この弁護士がしたことがどれだけひどいか、処分が重いか軽いかはここでは置いておくとして、今回は業務停止処分がどういうものか紹介したいと思います。

弁護士の懲戒処分は、重い順に、

①除名
②退会命令
③二年以内の業務の停止
④戒告

となっています(弁護士法57条第1項)。

今回は2ヶ月の業務停止なので③ですね。

業務停止2ヶ月と聞いて、なかには、「2ヶ月間弁護士として仕事をせずにおとなしくしてればいいのね。」と思う方もいると思います。
例えば、新しい事件の依頼は受けることはできないけれど、現在受任している事件の裁判期日は延期してもらって、顧問契約も契約自体は継続できるなど。
私も、弁護士になりたての頃はそんなふうに思っていました。

ですが、実はかなりのことができなくなるんです。
「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準」という規則で決められています。

新しい事件の依頼を受けられないのはもちろん、裁判期日の延期も認められないので代理人を辞任し、顧問契約も解約しなければいけません。
事務員の雇用は継続できますが、弁護士・法律事務所であることを表示する表札、看板等の一切の表示を除去しなければならず、名刺を使うのもダメ、弁護士バッチは返却しなければなりません。

つまり、業務停止期間中は弁護士という身分から離れなければならないということになります。
依頼者や顧問先に事情を話さなければならず、信頼を取り戻すのは簡単なことではないと思います。

もちろん、懲戒処分を受けるようなことをしなければよいのですが、こういうニュースに接するたびに、身が引き締まる思いです。

 

 

 

犯罪被害者支援弁護士フォーラムシンポジウム

犯罪被害者支援弁護士フォーラムのシンポジウム無事に終了しました。
会場は日比谷図書文化館大ホールでしたが、立見の方も出るほど大盛況となりました。

上川陽子法務大臣の祝辞から始まり、被害者遺族の方らによる基調講演、パネルディスカッションと盛りだくさんの内容でした。

今回のテーマは「裁判員裁判の問題」で、遺体写真を証拠として採用しない裁判所の運用についての問題と裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄され、最高裁も高裁の判断を支持した問題を扱いました。

遺体写真の証拠制限については、写真の証拠としての価値、立証趣旨との関係で写真を取り調べる必要性、裁判員の精神的負担への配慮等について議論がなされました。

また、裁判員裁判の死刑判決破棄の問題については、裁判員裁判の意義、死刑判決の基準、計画性の有無による量刑の変化、刑罰の公平性、裁判官だけの裁判時代の先例を重視する不合理性等について意見が交わされました。

会場からも多くの意見が出され、会場が一体となってその問題について考えるという熱い雰囲気の中シンポが進みました。

遺体写真の証拠制限の問題については、裁判員への負担を過度に気にしすぎるあまり、刑事訴訟法の目的である真実発見がないがしろにされていると思います。

また、裁判員裁判での死刑判決が破棄されたことについては、市民感覚を反映することによって司法に対する国民の理解と信頼を深めるという裁判員裁判を導入した意義を否定するものであって、事案の内容を考えても無期懲役の判断は大多数の国民の理解を得られるものではないと考えます。

シンポジウムの司会は初めての経験でしたが、ただしゃべるだけではなく、段取りの重要性や、突発的な出来事に対応する瞬発力が求められることを体感し、良い経験になりました。