09 事業承継税制

09 事業承継税制事業承継119番事業承継に関しては、税金の処理は避けて通れません。特に、生前贈与や相続に伴って発生する贈与税・相続税は、事業の継続を不可能にさせかねないインパクトを持っています。そこで、平成20年から、事業承継税制が創設され、贈与税の免除と納税猶予、相続税の免除と納税猶予によって中小企業の事業承継を支えようとしています。

なお、現在、新たな税制特例が検討されているところです(2014年7月時点)。

贈与税の納税猶予と免除

 贈与税の納税猶予

後継者である受贈者が自社株式を取得した場合に、一定の要件を満たせば、自社株式(発行済株式の2/3まで)の課税価格に対応する贈与税の納税が猶予されます(租税特別措置法70の7)。

 主な要件(H25改正前)  改正後
 会社が非上場の中小企業であること
 会社が風俗営業会社や資産管理会社でないこと
 後継者が贈与の際に会社の代表権を有していること
 後継者が旧経営者の親族であること  親族外でもよい(H27.1以降)
 後継者が役員就任から3年以上経過していること
 後継者らが、総議決権数の50%超の議決権を保有し、後継者が最も多くの議決権数を保有すること
 贈与者が会社の代表権を有していたこと
贈与者が贈与のときまでに会社の役員を退任すること  代表者を退任すればよい(H27.1以降)
贈与者らが、贈与の直前に、50%超の議決権を有し、贈与者が最も多くの議決権数を保有していたこと
税務署に担保を提供すること(通常は自社株式の全てを担保に提供する)
事前に経済産業大臣の認定を受けること 事前確認は不要(H25.4以降)
雇用の8割以上を5年間毎年維持すること 雇用の8割以上を5年間平均して維持すること(H27.1以降)

事業承継税制で処理する2/3の株式のほか、残り1/3の株式について、相続時の精算課税制度を併用することもできます。

贈与税の納税免除

以下の場合には、納税猶予を受けていた贈与税の納税が免除されます。

  • 先代経営者(贈与者)が死亡した場合
  • 後継者(受贈者)が死亡した場合
  • 申告期限後5年経過後に会社に対し破産手続き開始の決定等の命令があった場合

細かな要件がありますが、イメージとしては、事業承継を受け5年経過した後に、さらに事業承継をした場合に、贈与税の納税が免除されるという制度です。

但し、先代経営者が死亡した場合には、贈与税の納税は免除されるが、相続税が発生します。このとき、改めて相続税の納税猶予を受けることができます。

 

相続税の納税猶予と免除

相続税の納税猶予

後継者である相続人が自社株式を取得した場合に、一定の要件を満たせば、自社株式(発行済株式の2/3まで)の課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます(租税特別措置法70の7の2)。

主な要件(H25改正前)  改正後
会社が非上場の中小企業であること
会社が風俗営業会社や資産管理会社でないこと
後継者が相続開始から5か月後に会社の代表権を有していること
後継者が旧経営者の親族であること  親族外でもよい(H27.1以降)
後継者らが、総議決権数の50%超の議決権を保有し、後継者が最も多くの議決権数を保有すること
被相続人が会社の代表権を有していたこと
被相続人らが、贈与の直前に、50%超の議決権を有し、被相続人が後継者を除き最も多くの議決権数を保有していたこと
税務署に担保を提供すること(通常は自社株式の全てを担保に提供する)
事前に経済産業大臣の認定を受けること  事前確認は不要(H25.4以降)
雇用の8割以上を5年間毎年維持すること 雇用の8割以上を5年間平均して維持すること(H27.1以降)
相続税の納税免除

納税猶予を受けた相続税について、以下の場合には納税が免除されます。

  • 後継者が死亡した場合
  • 経営承継期間後に、次の後継者が「贈与税の納税猶予制度」を適用して事業承継を受ける場合
  • 経営承継期間後に会社に対し破産手続き開始の決定等の命令があった場合

贈与税の場合と同様に、イメージとしては、事業承継をして5年以上経過してさらに事業承継をした場合に、猶予を受けていた相続税が免除されるという制度です。

 

納税猶予を利用するタイミング

現在、景気が上向いて来ていますが、まだまだ自社株式の評価に反映されていない中小企業も多いと思います。もし業績が上向いているのであれば、贈与税の納税猶予の制度を利用するにあたっては、今がちょうどいいタイミングかもしれません。

今のうちに納税猶予の制度を利用しておけば、将来自社株式の評価が上昇しても、生前贈与した部分は相続財産に加算されないことも見逃せないメリットです。

一方で、業績がまだまだ下落しそうだという場合には、現在の自社株式の評価で相続税を算出してしまいますし、雇用維持要件によってリストラの自由度も失われますから、利用は控えるべきでしょう。

参考リンク

 

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