5.1 民法(債権関係)改正と残業代

5.1 民法(債権関係)改正と残業代社長のための残業代対策119番

民法(債権関係)改正 とは

法制審議会民法(債権関係)部会で、2009年11月より、民法の債権関係の改正に関する議論が進んでおり、法務省のHPでその進行状況が確認できます。

残業代の支払いはどのように変わるか、現時点において法制審議会でなされている議論を概観します。

現行法の規定

現行民法第170条から第174条では、職業別の消滅時効の特則を定めており、一定の使用人の給料について1年の短期時効を定めています(民法第174条1号)。

この民法の消滅時効を労働者保護の見地から修正するのが労働基準法第115条です。

そこでは賃金債権は2年、退職金は5年の消滅時効期間を定めています。この点に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。

職業別短期消滅時効の廃止

法制審議会の中間試案では、民法の職業別消滅時効の特則を廃止することが提案されています。

すると、残業代を含む賃金債権の消滅時効はどうなるのでしょうか。

一つの理論的な考え方は、民法の大原則に戻り、権利を行使することができる時から、10年とし(民法第166条1項、第167条1項)、2年とする労働基準法の規定も廃止するというものです。

しかし、これまで2年間の短期消滅時効とされたものについて一律10年間の原則的時効期間とすることあまりに長すぎ実務に与える影響も大きくなりすぎるとも思われます。

そこで、中間試案では、次のような二つの案がだされています。

中間試案
  • 権利を行使することができる時から、5年とする甲案
  • 原則として権利を行使することができる時から、10年とした上で、労働者が賃金債権の存在と債務者を知ったときから3年、4年、5年という新たな時効期間を設け、そのいずれかが経過した時とする乙案

の二つが出されています。いずれの案も現行の労働基準法よりも労働者保護に厚いものとなっております。

会社がとるべき対応

債権法の改正がいつ,どのような内容でなされるのかはまだ決まってはいません。しかし、改正が実現した際には、早急かつ正確な対応が求められます。

関連法規

  • 労働基準法第115条
  • 民法第174条1号
  • 民法第166条1項
  • 第167条1項

(弁護士 高澤文俊)

2014年11月7日