4.3 労働委員会における紛争処理制度


4.3 労働委員会における紛争処理制度 – 中小企業残業代119番

行政による紛争処理制度

労働者と使用者との間に、残業代をはじめとする各種労働紛争が生じた場合において、労働者としては、先にご紹介した都道府県労働局におかれた紛争調整委員会を利用して労働紛争を解決するという選択のほか、労働委員会を利用して労働紛争を解決するという選択をすることが可能です。

そこで、今回は、労働委員会における労働紛争の解決手続について、ご説明致します。

労働委員会とは

労働委員会とは、労働者と使用者との間に生じた労働条件等に関する紛争の解決を図るほか、不当労働行為(労組法7条。主に、団結権や団体交渉権の侵害を禁じる規定です。)の成否を判断するために設けられている委員会です。労働委員会には、各都道府県の労働委員会の他、国の機関として中央労働委員会があります。

この労働委員会は、公益と労使間の利益が調和するよう、使用者を代表する使用者委員、労働者を代表する労働者委員及び公益を代表する公益委員が、それぞれ同数で組織されています(労組法19条、同法19条の3第1項、同法19条の12第2項)。

労働委員会におけるあっせんの概要

労働者が、残業代に関する使用者との紛争解決を望む場合、労働者は、労働者が勤務する事業所や、使用者の本社がある都道府県の労働委員会にあっせんの申立てをします(なお、東京都、兵庫県、福岡県の各労働委員会と中央労働委員会においては、個々の労働者と使用者との間に生じた労働紛争のあっせんは行っていません。東京都の場合には、東京都労働相談情報センターにおいて、兵庫県の場合は、兵庫労使相談センターにおいて、福岡県の場合は、福岡県の4か所の労働者支援事務所において、あっせんを行っています。)。

あっせんの申立てがなされると、各都道府県の会長が、使用者委員、労働者委員及び公益委員から、それぞれあっせん員を指名し、あっせん員が、相手方当事者を

呼び出します。呼び出しを受けた当事者は、その呼び出しに応じる義務を負うものではありませんので、あくまで、あっせんに応じるか否かは、相手方当事者の任意です。

相手方当事者が、あっせん員からの呼び出しに応じる場合には、期日が設けられますが、この期日においては、非公開で、交互に、事情聴取等を行うほか、使用者委員または労働者委員が、各当事者を説得すること等が行われます。なお、この期日は、必ずしも1回のみ開催されるものではなく、事案に応じて、複数回期日が開かれる場合もあります。

あっせんの効力

あっせん員のあっせんの結果、両当事者において合意が成立した場合、この合意には、後にご紹介する労働審判や裁判において成立する調停や和解としての効力ではなく、民事上の和解としての効力が与えられます。

すなわち、これは、例えば、あっせんの結果、使用者Yが労働者Xに、残業代として、30万円を支払う旨の合意が成立したにもかかわらず、YがXに対して、30万円を支払わない場合において、Xは、Yに対して、あっせんの結果をもって、強制執行をすることはできないことを意味します(この場合は、改めて、XがYに対して、労働審判又は裁判で、YがXに対して30万円の金銭支払義務を負う旨の審判又は判決を得る必要があります。)。

また、あっせんの結果、両当事者の合意が成立しない場合には、時効中断の効果は与えられていないことに注意が必要です。