4.1 労働基準監督署への申告

4.1 労働基準監督署への申告社長のための残業代対策119番今回は、残業代の未払いを理由として労働者が労働基準官署へ申告した場合の対応について勉強しましょう。

労働基準監督署

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めており、この最低限の労働条件が確保されるよう、民事上、及び刑事上の規定を設けています。

このような労働基準法における規制の実効性を確保するための専門的行政機関として、各都道府県管内には都道府県労働局の指揮監督を受ける労働基準監督署が設置されています。全国労働基準監督署の所在案内はこちらをご覧ください。

労働基準監督署は、労働基準行政の第一線的な機関として、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、その他の所管する法律に基づいて、労働条件の確保や改善の指導、安全衛生の指導、労災保険の給付、職業金連・職業紹介などの業務を行っています。

労働基準監督官の権限

労働基準監督署においては、労働基準監督官が配置されています。この労働基準監督官は、上記の各業務を遂行するため、次の権限を持っています。

  1. 事業所寄宿舎その他の附属建設物の臨検、帳簿及び書類の提出要求、使用者若しくは労働者に対して尋問する権限(労基法101条)
  2. 労基法違反の罪について刑訴法に規定する司法警察官としての職務権限(労基法102条)

労働基準監督署への申告

労働基準監督官の権限のうち、臨検には、定期に行われる定期監督だけではなく、労働者の申告によって行われる申告監督もあります(労基法104条1項)。

例えば、労働者は、未払い残業代等がある場合には、労働基準監督署に対して申告することにより、未払い残業代等の支払を受けるということも考えられます。

使用者は、労働者がこのような申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとされています(労基法104粂2項)。

なお、労働者が申告する事案のすべてにつき事業所に立ち入り調査をする臨検が行われるわけではなく、事案に応じ、事業主に労働基準監督署への出頭命令を出すこと等によって行われる場合もあります。

臨検

臨検により事業所に立ち入る場合には、事前に使用者に予告する場合もありますが、これをしない場合もあります。

臨検等が行われる場合の主な調査対象の書類は次のようなものとなります。

  1. 賃金台帳
  2. 出勤簿
  3. タイムカード
  4. 就業規則
  5. 労働条件通知書(雇用契約書)
  6. 36協定届等

臨検と使用者の対応

臨検によって労働関係法令違反が存在すると判断された場合には、使用者に対して「是正勧告書」が交付されます。また、法令違反に該当する可能性がある場合や法令違反とまではいえないものの改善の必要があると認めた場合には、「指導票」が交付されます。

是正勧告書が交付された場合、使用者は、速やかにその法令違反に関する是正措置を行い、その結果を「是正報告書」に記載して、労働基準監督署に報告しなければなりません。

使用者が注意すべきこと

労働基準法違反は刑罰を科せられるおそれもあります。悪質と認められば、書類送検、業種によっては、それを理由に業務停止を含めた重大な不利益を被るおそれがあります。初動を誤ると取り返しがつかない事態に陥るおそれがあります。早期に専門家に相談し、初動を誤らないようにすべきです。