3.8 労働時間の繰上げ・繰下げ


3.8 労働時間の繰上げ・繰下げ – 中小企業残業代119番就業時間をずらすことにより時間外割増賃金の発生を抑えることはできないでしょうか。今回は労働時間の繰上げ・繰下げについて勉強しましょう。

労働時間の繰上げ・繰下げの意義

労働時間の繰上げ・繰下げとは,就業規則などで定められている終業時間を,より早い時間帯にずらしたり,またはより遅い時間帯にずらすことを言います。

たとえば,就業時間が午前9時から午後6時(うち休憩1時間)と定められている会社において,業務上の理由から,終業時刻である午後6時以降の作業が必要となり,本来であれば時間外割増賃金が発生してしまうものの,他方,午前中には緊急対応を要する仕事はないという場合があります。このような場合に,その日に限って就業時間を後ろにずらせば,(例えば,午後0時~午後9時。うち休憩1時間。),時間外割増賃金の発生を抑制することができます。これを,労働時間の繰下げといいます。

反対に,本来の始業時間よりも早い時間帯に緊急対応を必要とする仕事があるような場合,就業時間を前倒しすることがありえます(例えば,午前7時~午後4時。うち休憩1時間。)。これを,労働時間の繰上げといいます。

なお,労働時間の繰上げが実施され,本来の始業時間よりも早く出社したにもかかわらず,終業時間が繰り上げた時間相当分の終業時刻を超えた場合(上記の例でいえば,午後4時を過ぎて就労が行われた場合),この繰り上げた時間相当の終業時刻以後の労働に関しては,時間外割増賃金が発生することになります。

労働時間の繰上げ・繰下げのための要件

労働時間の繰上げや繰下げを行うには,これを行うにつき業務上の必要性がある場合で,かつ,繰上げ・繰下げを行うことができる旨の規定が就業規則等に定められていることが必要となります。かかる規定がある場合には,労働者は,通常の出勤時間より早く出勤すること,は,通常の退勤時間以後も勤務することが義務付けられることになります。

就業規則上の規定例としては,次のようなものが考えられます。

第○条(所定就業時間の特例)

会社は,業務の都合上,始業時刻,休憩時間,終業時刻について,前条の定める1日当たりの実働時間の範囲内において,特定又はすべての従業員につき,これを繰り上げ,又は繰り下げることができる。

なお,このような規定がある場合も,従業員の生活に配慮し,労働時間の繰上げや繰下げを行う場合には,事前に従業員に通知しておくことが望ましいことはいうまでもありません。

(弁護士 板橋喜彦)