1.5 法定割増賃金率の引上げにおける中小事業主の猶予措置


1.5 法定割増賃金率の引上げにおける中小事業主の猶予措置 – 中小企業残業代119番

法定割増賃金率の引上げと中小事業主の猶予措置

平成22年4月1日に施行された改正労働基準法は,残業代について,時間外労働が1か月60時間を超えた場合に適用される法定割増賃金率を,25%から50%に引き上げました(法37条1項ただし書き)。

もっとも,この法定割増賃金率の引上げについては,中小企業に対して配慮し一定期間の猶予措置がとられました。この猶予期間は「当面の間」とされており,改正法施行後3年を経過した時点で,中小事業主に対する上記の猶予措置について検討を加えて,その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされています。

現時点で同法の制定からすでに4年が経過をしていますが,この点に関してはまだ特段の必要な措置はとられていない状況にありますが,新聞報道によると、2015年の通常国会に労働基準法の改正案を出し、2016年4月からの適用される見込みのようです(日本経済新聞2014.06.10web版)。

 猶予措置の対象となる「中小事業主」の範囲

法定割増賃金率の引上げにつき猶予措置の対象となる「中小事業主」の範囲は次のとおりです。

業種 資本金額又は出資総額 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 又は 50人以下
サービス業 5,000万円以下 又は 100人以下
卸売業 1億円以下 又は 100人以下
その他の業種 3億円以下 又は 300人以下

資本金額又は出資総額,及び常時使用する労働者数の一方が上記の基準を満たせば,中小事業主に該当することになります。なお、中小事業主の該当性は、事業場単位ではなく企業単位で判断されます。

一の事業主が複数の業種に該当する事業活動を行っている場合は,主要な事業活動によって判断されます。主要な事業活動が何かについては,過去1年間の収入額・販売額,労働者数・設備の多寡などから判断されることになります。

つぎに,資木金額または出資総額は,法人登記や定款の記載などから判断されることになります。

常時使用する労働者の数は,当該事業主の通常の状況によって判断されることになります。したがって,臨時的に労働者を雇い入れた場合,臨時的に欠員を生じた場合等については,労働者の数が変動したものとしては取り扱わないものとされています。労働者の数は,労働契約関係の有無によって判断されます。例えば,出向者については,在籍出向者は出向元と出向先の両方との間に労働契約関係があるため両方の労働者数に算入されることになりますが,移籍出向者(転籍者)は出向先の労働者数に算入され,派遣労働者は派遣元の労働者数に算入することとされています。

(弁護士 板橋喜彦)

2014年6月24日